フランス人のクリスマスは、「バカンス・ド・ノエル(クリスマス休暇)」と言われるくらい、特別な時間として考えられている。日頃は忙しく働いている人も、クリスマスだけは、家族とくつろぎのひと時を過ごす。もちろん料理はフランス料理。しかしそのフランス料理について私たちは知らないことが多い。
今回は、ケンズカフェ東京(東京・新宿御苑前)の氏家健治シェフ(以下、氏家氏)に、シェフの世界について伺った。実は氏家氏は、ホテルオークラ東京、赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロ等、高級店で修業を重ねた経験をもつ。
同店のガトーショコラは、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、TBS「ランク王国」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「おしゃれイズム」「嵐にしやがれ」などで紹介されたことがあるので、ご存知の方も多いことだろう。
■華やかだが厳しいシェフの世界
調理士学校などを卒業しレストランに就職すると、下積みコックとしてキャリアが始まる。シェフは調理全般お店の責任者のことを意味することが多いので、まずはコック(料理人)としてスタートをきる。
「フランス料理では厨房の責任者をシェフ・ド・キュイジーヌとよびます。日本語に訳すと総料理長になります。スー・シェフが副料理長、各部門ごとのシェフのことをシェフ・ド・パルティとよびます。ソーシエはソース、暖かいオードブルを調理し肉料理などを担当します。ロティスールがグリエやフライ、ローストなどの担当。パティシエはデザート、菓子を担当します。」(氏家氏)
「ワインなどの責任者は、シェフ・ソムリエ、サポートがコミ・ソムリエ。バーマンがカクテルなどを担当します。お店によってかなり細かくわかれていて、呼び名もお店によって異なりますので一律ではありません」(同)
しかし、華やかそうに見える料理人の世界はそれほど甘くは無い。
「入店すると一人前のコックになるように下積みを経験していきます。最初は雑用です。雑用は皿洗い、片付け、皮むき、賄い料理作り、掃除といった仕事ですが、この雑用を経験することで仕事を覚えて慣れることができます。決してあなどれる仕事ではありません。」(氏家氏)
大学を卒業して入社したての頃を思い出してもらいたい。顧客へのアポどりや、先輩社員が仕事をしやすいように、資料の準備・作成やチェックをおこなう。いきなり客先でプレゼンテーションなどさせてもらえない。またデスクまわりの整理整頓も当たり前だろう。
「どの仕事も料理につながる大切な仕事だと思わなくてはいけません。そして数年を経て少しずつ仕事を任されるようになります。シェフになるんだという気持ちをあきらめずに前向きに取り組むしかありません。」(氏家氏)
お店にもよるが、修行は厳しく、蹴られたり水をかけられることもあるそうだ。しかも勤務時間は早朝から夜遅くまで。どの仕事もそうだが、華やかそうに見える仕事の裏側にはこのような修行の歴史があるものだ。
■シェフの帽子はなぜ高いのか
フランス料理のお店でシェフを見わけることは難しくない。一番背が高い帽子をかぶっているのがシェフで間違いない。
「18世紀の有名シェフ、アントワーヌ・カレームが最初にかぶったとされています。それを他のコックなどがマネをしたことでひろがっていきました。カレームはフランス料理の発展に大きく貢献し、王族の料理人などもつとめていたことからシェフの帝王と呼ばれています。」(氏家氏)
「その後、オーギュスト・エスコフィエによってフランス料理が体系化されていきます。なかには、部下に威厳を示すために、高い帽子を被るシェフもいたようです。ですが、フランス料理の世界は階級社会です。その厳しさや威厳によって格式が保たれています。」(同)
フランス料理を食する際に、このような歴史に思いをはせるのもいいだろう。なお、日本全国のファミリーマート・サークルK・サンクス約18000店にて、ケンズカフェ東京監修「クリスマスショコラケーキ」の予約が開始された。フランス料理との相性が抜群といわれる上質なチョコレートの口どけを楽しんでみては。
尾藤克之
コラムニスト
アゴラ出版道場、第1期の講座が11月12日(土)に修了しました。12月6日に「第3回アゴラ著者入門セミナー」を開催しました。次回は1月末の開催予定です。
なお、第2期出版道場は、来春予定しています。