軍事研究って何?

山田 肇

朝日新聞が「関大、軍事研究させません 防衛省補助金への応募認めず」と報じている。大学の研究倫理規準に基づき、防衛省の「安全保障技術研究推進制度」への応募を認めないなどとルール化したそうだ。

今年度の「安全保障技術研究推進制度」の公募は3月に開始された。公募要領には次のような説明がある

本制度で委託する研究は、防衛装備品そのものの研究開発ではなく、将来の装備品に適用できる可能性のある萌芽的な技術を対象としたものです。研究の結果、良好な成果が得られたものについては、防衛省において引き続き応用研究等を実施することでその成果を見極め、将来の装備品に繋がっていくことが期待されますが、こうした基礎的な技術には多義性があり、様々な応用が考えられます。防衛装備庁としては、研究成果の最大活用の観点から、本制度で得られた研究成果が広く民生分野で活用されることを期待します。

反対派は「軍学共同反対連絡会」などを組織したほか、日本学術会議にも働きかけている。日本学術会議は「安全保障と学術に関する検討委員会」で検討を進めている。

考えてほしいのは、軍事研究と民生研究がはっきりと区分できないことだ。情報通信分野では特にその傾向が著しい。ソビエト連邦からの核攻撃があっても通信を維持する方法をアメリカで研究した結果がインターネットである。ソニーのCCD素子が湾岸戦争時に米軍の空対地ミサイルに搭載されていたことは毎日新聞にも報じられている。日本の組織に対するサイバー攻撃が頻発し政府は対策に追われているが、攻撃する側も防御する側も情報通信技術の専門家である。これらすべてが軍事研究なのだろうか。

上に挙げた事例は「実用段階」だが、「安全保障技術研究推進制度」は萌芽的な研究を支援するもので、軍事研究と民生研究の区分はますますむずかしい。「軍事研究はダメ」で思考停止するのはよくない。