世の中は究極のデコブーム。あなたの好きなデコはなに?

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写真中央が若生。料理教室にて。

いま食品業界に「デコブーム」が到来している。まずは「デコ弁」だ。デコ弁とは、デコレーション弁当のことで、お弁当をキャラクターの絵で彩ったものが人気だ。100円ショップでも「デコ弁グッズ」なるものが販売されており、ピンセット、くり抜き器、切り出し刀、お絵かきペン、などが販売されている。その姿は図工の工作箱に近い。

■食育のあるべき姿は「親子クッキング」にある

「デコ弁」以外では、白玉だんごにデコレーションを施す「デコ白玉」、電子レンジでつくる「デコ和菓子」、「クリスマスデコケーキ」というキャラデコケーキも人気のようだ。また、親子でデコることの効果も期待されている。

食育基本法が施行から11年が経過し、最近では親子のコミュニケーションを深める施策として食育への関心が高まってきた。バランスのよい食事、選び方、食に関する文化など、広い視点から食について学ぶ動きが活発化している。その一つが、親と子が一緒に料理をする「親子クッキング」ではないかと考えている。

「親子クッキング」はコミュニケーションの質を高める。子供は、調理された野菜たっぷりのサラダを食べることが苦手かも知れないが、野菜のモトの形を知り、調理方法を知り、味を知ることで関心が高まる。さらに、調理をすることの喜びや楽しさを知ることで好き嫌いを無くすことにも効果がある

そんな「親子クッキング」に理想的な料理が存在する。それは「デコ巻きずし」である。元々は「絵巻き寿司」という金太郎飴のようにどこを切っても同じ絵柄が出てくる寿司がある。この「絵巻き寿司」を太巻きにして、バリエーションを豊富にしたものを「デコ巻きずし」とよぶ。レシピも豊富にあり、親子、外国人を対象にした料理教室は人気が高い。

「絵巻き寿司」は日本の各地の郷土料理として親しまれてきた。寿司の一種で、海苔に酢飯を広げてその上に具材を乗せて巻いたものを指す。「絵巻き寿司」には、いくつかの種類があり、太さによって「細巻」「中巻」「太巻」などに分類される。千葉県九十九里などを中心とし千葉県全域で作られる郷土料理で「房総巻き」「祭り寿司」などの呼び名もある。

また、ふるさとおにぎり百選と農山漁村の郷土料理百選にも選ばれており、その歴史は江戸時代にまでさかのぼる。当時は、酢飯に魚をのせて桜でんぶや薄焼き卵、高菜で巻いシンプルな形体が、数百年の時を越えて「デコ巻きずし」として生まれ変わった。つまり江戸時代からタイムスリップを果たしたのである。

■「デコ巻きずし」でやりがいを見つける

「デコ巻きずし」のマイスターをつとめる、若生久美子(以下、若生)氏は、1977年生まれ兵庫県在住の主婦である。社員やパートなどを経験。特技や趣味もなかったが、2014年初めて「デコ巻きずし」を見て一目ぼれし、日本デコずし協会認定・デコ巻きずしマイスターを取得した。

本人は、謙遜しながら普通のOL事務職だったことを吐露しているが、「デコ巻きずし」に出会ってから、若生の生活は一変したようだ。2015年に「ほっとネット★ベイコム」を皮切りに、関西テレビ「よ~いドン」、神戸新聞「自宅教室取材」、東京ビッグサイト「ホビークッキングフェア参加」、シンガポールにて「デコ巻きずし」の出張レッスンを開催するに至っている。日本全国はもちろん、海外からも引っ張りだこのようだ。

若生によれば、海外での出張レッスンでのニーズは思った以上に高い。「最初は、不思議そうにしている子供たちも、時間が経つにつれて面白さに引き込まれていきます。実は、子供たちよりも、親御さんのほうが熱心になる傾向にあります。普段は仕事でなかなか時間が取りにくいと思いますが、たまには、『デコ巻きずし』を通じて、子供とじっくり向き合う時間も良いのではないでしょうか。」(若生)

「デコ巻きずしを作って、周囲や家族の反応が変わったと言われる方が多いです。子どもは大変喜びますし、なにしろ切る時のワクワク感がたまらないようです。子供の友達が遊びに来たら披露したいと言っている方もいます。」(同)

家族なら親子で楽しめる。教室では参加者同士が出来栄えを競いあう。実際に、業界団体の「日本デコずし協会」が公認する教室なども活発におこなわれている。子供の教育上、自分が作ったものを大切にいただく意識をもつことは大切だ。食材をつくった人の気持ちを知ることで、残さず食べることの大切さも理解できる。

「断面のデザイン性を競ってインスタなどにUPする方も多いですよ。」と穏やかに語る、若生の表情には一点の曇りもなかった。「デコ巻きずし」に幸多かれ!

参考書籍
親子で楽しむかわいいデコ巻きずし』(マガジンランド)

尾藤克之
コラムニスト

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