IR法案の肝は依存症対策の財源確保にある、と言われると、なるほどそういう一面もあるな、という気はしている。
私は煙草を呑まないから、煙草1箱が1000円になっても2000円になっても構わない。
煙草の代金の90パーセントが税金で、国と地方とでその税金を折半する、と言われても、ああそうですか、ということになる。
その税金が何に使われることになるかについては大いなる関心を抱くが、愛煙者の方々がせっせと喫煙して税金を納めてくれるのであれば、少々の煙草の煙での被害は我慢しようと思う。
しかし、煙草を吸わない人間にとっては煙草は迷惑な存在であることは間違いない。
出来れば止めてもらいたいと思うが、しかし煙草を呑まざるを得ない人が現実にいることは知っているから、渋い顔をして黙って見ている。
身体にいいことはないのに、よく吸っているな、と呆れて見ているだけである。
高速道路の真ん中を歩いているようなものですよ、などと言っても、自分は大丈夫、車の方が裂けてくれる、と信じ込んでいる人には何を言っても無駄。
危ない!という警告はするが、自分の身を危険に晒してまで止めるようなことまではしない。
ギャンブル依存症の場合は、煙草よりも人の生活を破壊する程度が大きそうなので、これを放置しておくと社会全体がおかしくなる虞があり、様々な犯罪を誘発しやすくなりそうだから、治安を確保し安心・安全な社会を築く、という観点から何らかの対策が講じられるべきだろう、と思っている。
依存症対策の充実を求める家族会の皆さんがIR法に一縷の望みを託しておられるのは、多分現在の国の依存症対策が不十分で、実効性のある対策になっていないからだろうと思っている。
IR法が出来れば、カジノだけでなくあらゆるギャンブル依存症対策が進められるはずだ、という熱い願望がそこに籠められているようである。
しかし、今国会で審議が進められているIR法案は、依存症対策の具体的中身に触れておらず、行政にその検討を義務付けるだけの、大まかなプログラムを書いただけのプログラム法案だから、カジノ解禁の方向性を示しただけのカジノ解禁法案に過ぎない、という批判は基本的に当たっていると思う。
国が本格的に依存症対策を推進するためにはそれなりの財源を確保しなければならないが、国の財政の実情を見るとどこにもその財源が見当たらないから、カジノを合法化してカジノの収益の中から依存症対策の原資を確保しようとする動きが出てくるのも止むを得ない面がある。
筋は悪いが、一つの現実に即した政策的判断ではある。
私は賛成できないが、与野党に跨ってIR法案を推進したい国会議員がいることは、それなりに理解している。
民進党は、現在のIR法案には反対するということで党としての方針を取りまとめたようだが、ただの反対だけでは結局与党のIR法推進派に押し切られてお終いになるところだった。
民進党はIR法案に反対しました、というだけでは、自民党の批判勢力としての存在は誇示できるだろうが、反対、反対だけで対案が何もない、というのではかつての社会党と同じ「反対党」で終わるところだった。
聞くところによると、民進党は依存症対策法を今国会に提出することに決めたそうだ。
もっと早くから取り組めばよかっただろうに、と思うが、何もやらないよりはいい。
どんな内容になるのか分からないが、いずれにしても次に提案されることになる政府の依存症対策の中身に大なり小なり影響を与えるものになるだろうと思っている。
民進党も、また、ちょっとだけ進歩したようですね。
とりあえず、そう申し上げておく。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年12月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。