東電と中電のJ/V、米国産LNG初輸入へ

Bloombergが報じている記事を読んで、JERA(東電と中電のJ/V)のHPをチェックしたら、12月8日にプレスリリースをしていた。なぜ日本のメディアは報じないのだろうか?

Bloombergのニュースは “Shale revolution that shock US market heads to Japan(米国市場を揺るがしたシェール革命が日本へ)” となっており、12月8日5:34am EST(米国東部標準時間、日本との時差14時間)に初稿が、ついで12月9日2:11am ESTにupdateされている。

LNG市場の構造に関わる問題なので、日本のメディアももう少し関心を持ってもいいのではないだろうか。
さて、要点を次のとおり紹介しておこう(なお括弧内は筆者の注記)。

・北米市場をひっくり返したシェール革命が、ついに世界最大のLNG消費国・日本に向かっている。

・JERAのスポークスマン・サワキ・アツオ氏は、1月に初めのシェールガスから生産されるLNGを受け取る、と語った。(米国企業)シェニエール社のサビン・パス基地からのアジア向け最初のLNGである。

・これは2年以上前に締結された契約の成果だ。米国からの輸出はまだ相対的に小さいものだが、原油価格リンクが支配的な日本市場に、米国の天然ガス市場価格にリンクしたLNGが販売されるところに意味があるものだ。また、買主が売主に要求している仕向地を自由に変えられることになっている。

・サワキ氏によれば、約7万トンのサビン・パス産LNGは、「オーク・スプリット号」に12月7日に船積みされた。JERAはシェニエール社から2016年7月から2018年1月の間に70万トンのLNGを引き取ることになっている。

・11月のJOGMEC発表によると、日本全体では米国産LNGを2017年から2022年に始まる契約に基づき、1400万トン(年あたり)引き取る長期契約を結んでいる。

・今年初めのIEA報告によると、日本、中国、韓国の三カ国で世界の半分以上のLNGを購入しているが、2017年から2018年にかけて約200億立米(LNG換算1,480万トン)の供給過剰となっている。

・日本の買主たちは、ほとんどのLNG購入契約の中にある仕向地条項(買主の受入基地以外には持ち込めない)が公正な貿易取引法に抵触しているのではないかと詳しく調査している。12月1日、JERA会長のヘンドリック・ゴーデンカー氏(米人弁護士、White & Case社の東京事務所に2000年以来勤務しており、東電や中電のエネルギー取引等に長年関与していた人で、2016年4月1日に就任)はインタビューに応え、「LNGの再販を買主に許すように(契約に)もっと自由度を加えることは、市場をより効率的なものとし、需要を喚起するので、売主にとっても利益のあるものだ」と語った。

・なお、シェニエール社は、今年2月に最初のLNGをブラジルに輸出した。

弊ブログ「米国産ガスが中東へ」(2016年7月19日)で、今年2月に始まったシェニエール社からのLNGが、それまでのアルゼンチン、チリ、ブラジル、インド、ポルトガルに加え、クウエートとドバイにも輸出された、というニュースを紹介しておいたが、販路がさらに広がり、ついに日本にも来た、ということだ。価格については公表されていないが、アメリカのヘンリーハブの価格が2.50ドル(百万BTUあたり)程度なので、液化費用や日本までの運賃(5~7ドルと言われている)を加味すると、日本着7.50~9.50ドルとなり、最近の日本平均の輸入価格7.30ドル程度と比べると若干割高となる見込みだ。

また弊著『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』(2014年9月)でも紹介しているように、日本企業が参画している米国LNGプロジェクトが2017年以降、順次立ち上がり、輸出を開始する予定だ。

これらのLNGプロジェクトは、通常のものと異なり、「液化能力」だけを押さえているものなので、生ガスを液化してできたLNGを日本に持って来ないで他国に販売することも、さらに言えば「液化費用」を支払えば使用しなくても済む類のものになっている。したがって、IEA分析のように「供給過剰(必要分以上に購入している)」だとしても、他国へ販売するか、LNGを生産しないことで対応が可能なのだ。

つまり日本勢としては、購入契約の多様化が実現し、在来型のLNG売主との新規契約、あるいは契約更改時に、より有利な契約条件の確保が可能となることが期待されているのである。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年12月9日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。