補助金の使途が問題になっている千葉県成田市(写真は市役所庁舎。Wikipediaより:編集部)
7日の一般質問で取り上げた、成田市指定無形民俗文化財保存団体連絡会の補助金の使途不明に関する記事が、翌日の千葉日報と読売新聞で取り上げられました。
千葉日報より(※当該記事の一部引用:編集部)
今回は、現時知り得る限りの情報を収集した上で一般質問に臨みましたが、この件に関しては未だ事実関係が完全に明らかになっていないことを踏まえ、このようなことを許容することになった「補助金給付行政の見直し」に的を絞り質問を展開しました。
①団体補助の場合は領収書添付の義務がない!
思わず議場でも、「社会通念上あり得ない!!」と声をあげてしまいましたが、残念ながら成田市の補助金交付規則には団体への補助における領収書添付の義務がありません。
成田市の言い分は次の通りです。
団体には会計や監事が選任されており、団体の決算状況について、領収書の確認も含めて帳簿類が適正に処理されているか監査を行い、収支決算書に監査報告書を添付することが原則となっているので、改めて市が実績報告の段階で、領収書の確認までは実施していない。
条例も規則もすべて基本的には性善説で成り立っていますので、適正な団体に補助を出した以上、その団体で適切に会計処理をしてもらい、そこから上がってきた実績報告書を確認しているので、わざわざダブルチェックまではしないということです。
気持ちはわかります。
ですが、そのような運用だからこそ、こうした事態を招いたのではないかと言わざるを得ません。
実績報告書や収支決算書といった書類審査だけであったため、3年間もの間、実際の会計処理とは異なる報告書が上がってきても気づかなかったわけですし、市が確認のために領収書を求めても、直ちに提出されてこないほどに杜撰な会計処理をされてしまったのだと思います。
また、会計や監事を置くと決められていながら、会長が実質的な収支も行っていたなど、市が公金である補助金を支出するに値する団体かどうかという、チェック体制の見直しが必要であると考えます
雨宮の提案:→領収書の添付を絶対条件に!!
②飲食だろうが何だろうが、補助金をどんなことにも使うことができる。
いや、厳密にいうと市も飲食費、交際費、慶弔費などは補助対象外経費として運用しています。ですが、成文化されていないため、ザル法となっています。
①で指摘したように、市は実績報告書と収支決算書などでしか判断しませんので、例えばですが、
総会会議費 76,000円
会議費 54,000円
などと書かれていたら、それが仮に宴席での飲食代に消えていようとも、適切に運用されたとして処理せざるを得ないのです。
つまり、一度補助金をもらってしまえば、補助金を宴会費として支出したとしても、実績報告書や収支決算書の適当な項目に数字を入れてしまえば、何に使っても市はそれを調べる術を持っていなかったのです。
よって、補助金の交付事務に関する取扱基準の策定が急がれます。
※会議等の茶菓代や来賓等の弁当代など、事業に必要な経費は認められています。
雨宮の提案:→補助金の対象経費の範囲、基準を設けるべき!
③どんな団体、どんな事業に補助金が交付されるのか明確な交付基準がない。
補助金の法根拠は、地方自治法第232条の2で規定されています。その規定では、自治体が補助金を交付できるのは「公益上必要がある場合において」となっています。
ここで勘違いしてはいけないのは、あくまでも自治法では、公益上必要がある場合は補助金を交付することが「できる」と規定しているだけであり、公益上必要があるからといって、無制限に補助金が交付されるわけではないということです。
したがって自治体は、補助金交付の決定においては、
1、その事業に公益性があるかどうか
2、公益性があった場合、実際に補助金を交付するか否か
といった二段階の意思決定をしなければなりません。
この二段階の意思決定は、だれが、いつ、どのような議論を経て、判断・決定するのか質したところ、「担当課が公益性を判断し、それを予算編成過程で検討し決定する」というものでした。
公益性を判断するための基準がない現状においては、この判断の段階で各課対応に差が生じることは言うまでもありません。
また、補助事業の決定については「各種団体などからの補助の要望に対しまして・・・云々」といった答弁も為されていましたが、あくまでも補助金は、他者からの要望があれば即交付される、なんてことは決してありません。
「補助事業の決定」は、まずは市が、公益性が高く補助金を交付するに足る事業を選定・決定し、その事業を行っている事業者が、自分たちの事業が補助金対象事業であることを知って、はじめて市に補助金申請を行う。
というのが、基本的なプロセスだからです。
お隣り佐倉市においては、補助事業についての交付基準が市民に対して広報されているため、「補助金対象事業に対する透明度」が担保されていると感じています。
「佐倉市補助金等交付基準」
わが成田市においては、「補助金対象事業」を決めるための統一された基準が確立されていないため、市民に対して広報することはおろか、各部、各課の判断で「公益性」を判断してきた経緯があります。
このため、自分が行っている事業が補助金対象となるかどうかすら思い至らないケースや、他の同様事業には補助金が付くのにこっちには付かない、といった不公平感が生じてしまうのです。
余談ですが、成田市の観光キャラクタ-である「うなり君」を中心としたイルミネーションで冬の夜空をひと際鮮やかに飾り、多くの市民から好評を得ている催しがここ数年継続されています。
ですがこの催しは、補助金対象とはなっていません。100%有志によるボランティアと市内企業の協賛により成り立っているものです。
(わたしも、ボランティアの一員として毎年参加しています。)
いずれにしても、明確な交付基準が確立されていないため、今まで市民はまともに補助金申請すらできなかったはずです。
そして、基準がないからこそ、議員や権力者を団体メンバーに添えることで、市側が断りにくい雰囲気を生み出した団体が補助金を受けやすい、といった流れになっていたのではないか?と邪推もされるのではないでしょうか。
このように考えると、成田市の補助金対象事業決定の過程は、あまりに不透明であり、あまりに杜撰であったと評価せざるを得ません。
雨宮の提案:→補助事業の対象基準を至急設けるべき!
担当部局からは、補助金の適正な執行に向けてルール作りや基準の策定に対応すること、そして監査委員から指摘があった場合も、可及的速やかに対応するとの真摯な答弁がありました。
厳しいことを書きましたが、それもこれも信頼関係のなかで成り立ってきたこれまでの運用を裏切る事態が生じたことによります。
事態の究明もさることながら、二度とこうした運用がなされることのないようにしっかり対応いただけるよう、引き続き注視していきたいと思います。
成田市議会議員 雨宮しんご