オリンピックの影響だろうか、今年は不動産投資の営業電話が増えたように感じている。「ここだけの話ですけどね○○でオイシイ物件があります!」「流動性が高くて利回りの良い物件がありますよ!」。こんな具合だ。
しかし、確実に儲かる物件があった場合、それが一般に出回ることは理論的に考え難いだろう。見ず知らずの第三者が美味しい情報に有りつけるほど甘くはないし、本当にオイシイ物件があるなら、私なら他人には紹介せずに自分で購入する。
「自らの目利きの能力を鍛える必要がありますね」。そう話すのは、『自己資金0円からはじめる不動産投資』の著者であり、不動産投資家の桜木大洋(以下、桜木氏)である。
■銀行や専門家とのコネクション強化が必要
最近は様々な考え方の不動産投資の書籍が発売されている。確実に儲かる不動産投資など存在しない。「自己資金ゼロではじめる不動産投資」「誰でもできる金持ち父さん方式」など、このように使われている営業トークの中身についても精査したほうが良いだろう。
新築2000万円のワンルームマンションを利回り5%で5年運用すれば500万円の利益が出る。ワンルームマンションリスクを語る人の多くは、2000万円で購入した物件が、実際には2000万円では売れないことを問題視する。そして実入りが少ないことを主張する。2000万円で売れないわけだから、このケースであれば500万円の利益は得られないと。
また、不動産は景気の影響を受けやすいので、景気の将来的な予測もしながら先読みをしなくてはいけない。最近であればオリンピックの影響もあり湾岸エリアは建設ラッシュだったが、供給過剰になりつつある。物件が売ればければ供給過剰になることは当然であり、売れ残る物件が発生する。売れ残った物件が投げ売りされたら、価格の下落を引き起こす。
不動産投資に正解はない。投資シミュレーションにあたって一般の方は入手できる情報に限界が生じる。そのためにも、銀行や専門家との関係性を構築して、質の高い情報を入手できるルートの確保が必要になる。
桜木氏も、銀行や専門家との連携を密にしながら慎重に且つ大胆に進めている。数年前、1年間で102回のシミュレーションをしたそうだ。しかし一件も成約には至らなかった。
「次のRCを購人して『年問キャッシュフロー2000万円!』という、新たな日標をたてましたが簡単ではありませんでした。連日インターネットで物件検索して、良さそうなものが見つかったらすぐに不動産会社に連絡します。資料が届いたら数値のシミュレーションをして、基準をクリアする物件なら現場を視察し問題がなければ、買付を入れて金融機関に持ち込む。その作業の繰り返しでした。」(桜木氏)
「102件中、不動産会社と面談ができたのが30社。それからさらに物件視察に行ったのが14件。買付が10件。融資申込が8件。成約0という結果でした。この時期は、いつも寝不足でした。結果も出ず、疲労感が増すばかりでした。」(同)
ところが、このあとに桜木氏は理想的な物件を続けて成約させる。桜木氏は自分自身の判断基準とするポイントをいくつか持ち合わせている。それは、家賃収入に占める返済額の割合(返済比率)と、すべての経費を引いた後にいくら手残りがあるか(キャッシュフロー比率)。これを十分に検証せずに購入すると、期待外れの現実に直面することになる。
特に、物件を成約させる際には銀行の理解が必要になるので、各関係者や専門家とのパイプが必要になる。パイプつくりのための活動は日々実践しておきたい。
■不動産投資はしっかりと吟味を
本書は不動産投資の入門書と考えたほうが良い。普通のサラリーマンから自己資金ゼロで資産8億円!家賃年収7500万円を稼ぐ物件の選び方、数字の読み方、融資交渉の秘訣、行動について明らかになっている。但し、表面上の金額にとらわれて安易に期待することも禁物。桜木氏が何を考えて、どう動いたか、が本質であり、それはサラリーマンが日頃の仕事の進め方を改善するヒントにもなる。
不動産投資の勧誘は圧倒的に電話が多い。彼らの多くは雄弁なので知識がなければ、まんまと乗せられてしまう。「不動産投資ってなに?」みたいな素朴な疑問を感じたら、まずこの本を読んでもらいたい。概ねの概況は把握することができるだろう。
また、オリンピック後にバブルが崩壊して、ゴーストタウンと化してしまったケースも世界的に後を絶たない。常に正しい情報をアップデートしておきたい。
尾藤克之
コラムニスト
アゴラ出版道場、第1期の講座が11月12日(土)に修了しました。出版社と面談が決まった一期生は企画をアレンジし、捲土重来を目指す受講者も日々ブラッシュアップ中です。二期目となる次回の出版道場は来春の予定です。
導入編となる初級講座は、毎月1度のペースで開催。12月6日に「第3回アゴラ著者入門セミナー」の会は参加者のほぼ全員が懇親会に参加するなど、早くも気合がみなぎっていました。次回は1月31日の予定です(講座内容はこちら)。「来年こそ出版したい」という貴方の挑戦をお待ちしています(お申し込みは左のバナーをクリックください)。