竹中平蔵×安部敏樹、「本質を見定める力」が際立つ『日本につけるクスリ』

井上 貴至

あべちゃん、すごい!

いや、安部敏樹はいつもすごいのだが、この本のあべちゃんは竹中平蔵氏との対談の中で、「本質を見定める力」が際立っているのではないか。

竹中 平蔵
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016-12-16

『日本につけるクスリ』は、小泉内閣で郵政民営化などを進めた竹中平蔵氏と、日本一社会問題に詳しい男・リディラバ安部敏樹氏の対談本。

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安部敏樹君「僕がリディラバを始めた理由」

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史上最年少東大講師!安部敏樹君の『いつかリーダーになる君たちへ』

という方は、まずはこちらから。

第1部で、税金、格差や地方自治など「いまの日本、何が問題」について徹底的に診断し、第2部でその処方箋について議論する。竹中平蔵氏と安部敏樹氏の「率直な語り合い」が、問題を浮き彫りにする。気づきを与えてくれる一冊だ。

例えば、

傾聴する人と、あと「何歳になってもリスクを取って挑戦できる人」も一緒に仕事がしたいし、尊敬できますね。もっと世の中のじいちゃん、ばあちゃんが挑戦と失敗を経験したら、「変わる」ことへの抵抗感も薄れると思うんですよ。(212ページ、安部敏樹氏)

●「おれはこれぐらいまで行けそうだ」という将来の自分に対する予測値を少しずつ下げて、現実との折り合いをつけていく。それは人間としての成長でもあるんですけど、下方修正ばかり繰り返していると、いずれ挑戦すらしなくなります。だから僕は「このままだと挫折するかも」と感じた瞬間に「もし失敗しても、絶対に期待値は下げない」と事前に決めてしまいます。期待値は自動的に下がるから、意識的に上げるんです。

僕、中高生を相手に講演するときもよく「自分以上に自分に期待できる人間はいない」と伝えています。先生も親も、挫折を味わせたくないという親切心で君たちの期待値を下げてくるから、自分の期待値は自分で守らなければいけないよ、と。

自分の期待値を低く見積もりあきらめることが増えると、いつしか他人にも「あきらめ」を強要することになります。そんな「低期待社会」は、誰にとっても望ましくありませんから。(225ページ、安部敏樹氏)

●シェアリングエコノミーの場合、顧客と運転手がデータをもとにお互い審査できるから、公的な決まりごとがなくてもクオリティや安全が担保されてしまう。それを担保するための公的なプラットフォームがいらなくなってしまうんですね。

だから、これからは「業界VSプラットフォーム」ではなく「国VSプラットフォーム」の戦いになると思います。もっと詳しく言うと、「与信をオーソライズしたい国」と「与信をオーソライズする力が国より強いプラットフォーム」ですね。

なぜ戦いになるかと言えば、誰に資格を与えるかという「審査」こそが役所の財源であり、官僚の権力そのものだからです。(175ページ、安部敏樹氏)

といった具合。
この本には、気づきがあふれている。

(2016年、9月あべちゃんと記者会見)

さまざまな分野の問題について、竹中平蔵氏が、現行制度のメリットや経緯についてほとんど触れず、現行制度の問題点だけを挙げて、規制緩和を訴え続け、その結果、規制緩和という手段が目的化しているように読めてしまうところもあるのに対して、あべちゃんはときに同調しながら、ときに激しく議論する。

特に、選挙やメディアに対する考え方の違いは、面白い。

●システムは一番愚かな人間に合わせてつくるべき、
個人個人が利己的に働いた結果、社会問題への関心が生まれている仕組みをつくるのが大事になる

などあべちゃんの原体験に裏打ちされた信念、そして人間への信頼が響く。竹中平蔵氏との対談の中で、あべちゃんの「本質を見定める力」が際立った一冊だと思う。

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<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
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編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。