領土問題、主権問題を回避するためには、国連に一枚噛んでもらうのがいいのではないだろうか、などという突飛な考えに取り憑かれ始めた。
ロシアのプーチン大統領が北方4島返還問題についてうんと言う可能性がないことは、大方の国民が理解しているはずだ。
ロシアとの間に平和条約を締結するれば歯舞、色丹の2島に限っては日本に引き渡しがなされるだろうことは見えているが、これに主権問題が絡むと延々と交渉が長引き、その交渉の過程で日本が更なる譲歩を迫られるようになるだろうから、北方4島領土問題はいつまでも日本とロシアとの関係を改善していく上での障害になることは必至である。
新しい枠組みの中で北方4島問題を考えていかなければならない、というのは、多分長年この問題に向き合ってこられた方々の共通認識なんだと思う。
そう簡単に解決が出来るような問題ではないことは十分承知しているが、それでも事態をほんのちょっぴりでも前へ進めようというのが、今回の安倍・プーチン長門会談の趣旨だったのだろう。
1ミリ以上は、前進した。
私は、そう評価している。
動かないはずのものが、ほんのちょっぴりでも動く可能性を示したのだから、これからの工夫次第ではもっと動かすことが出来るかも知れない。
どんな重い物、どんな大きな物でも地面に穴を掘ると転がるようになるものである。
堅くてとても歯が立たないと思っていた岩盤を、関係者の皆さんが一生懸命削って、ようやく今小さな窪みを付けたくらいのところかも知れない。
いや、北方領土問題はますます後退した、今回の安倍・プーチン会談は失敗だ、北方4島は絶対に帰って来ない、などと嘆きの声を上げている方もおられるようだが、北方領土問題を政局に絡めるのは止めた方がいい。
1ミリ以上動いたのだから、もっと動かすための知恵をみんなで出していきましょうよ、ぐらいがいいのではないだろうか。
安倍総理の批判だけでは、何も変わらない。知恵がある人がこれからの日本の政治を牽引して行けばいいだけの話である。
いずれにしても、日本とロシアが北方4島の開発について経済協力をする、という方向性が示された。
北方4島の共同開発とまでは行かないだろうが、主権の問題は一応棚上げして日本とロシアが経済協力するという方向性が打ち出されたことは評価されていい。
ロシアは、北方4島の開発はロシアの法律の下で進めることに最後まで固執するだろうが、日本は北方4島の開発に関わる特例法を制定して、北方4島の共同開発事業についてはロシアの定める法制に準拠したルールに従う、とでも規定しておけばいい。
一番いいのは、アメリカや国連の協力を得て、北方4島の共同開発・共同管理についての国際的なルールを作り上げることだろう。
何にしても、工夫の仕方によっては、領土問題を事実上棚上げして、北方4島等について日本とロシアで共同開発なり経済協力の道を拓くことが出来そうである。
ダメだダメだ、と言う前に、現状を少しでも変えていくための知恵を、皆さん、競い合っては如何だろうか。
何か方策があるはずだ。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年12月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。