流行りだからとAIを取り入れても失敗する

山田 肇

東洋経済が発行する『会社四季報』2017年新春号に、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)・ビッグデータなどの各社導入状況が掲載されるという。東洋経済オンラインは会社四季報のこの企画を宣伝し、コマツなどの先進事例に触れている。

コマツの取り組みはかねてより関心を集め、日本経済再生本部の未来投資会議(2016年9月12日)でも紹介された。建設現場で起きる予測不可能な事態に対して、現場監督の経験を学習したAIが最適な対処方法を推奨する。これと建設機械の自動制御・遠隔モニタリングを組み合わせて、建設技能労働者の減少を補うという。

12月17日の日本経済新聞は記事「ネット通販、信頼性磨く 模造品排除や口コミ評価厳格に」を掲載した。アマゾンは模造品の発見などにAIを活用し、ネット通販の信頼性を向上させるという。不正出品者の手口をAIで分析し、摘発するのに利用するそうだ。

コマツはかねてより情報技術の活用に積極的である。建設機械や鉱山機械にセンサを取り付け、車両の位置や稼働時間、稼働状況などをモニタして、車両の稼働率向上や維持費の低減する、遠隔モニタリングサービスを提供している。アマゾンは電子商取引を中核ビジネスとする企業で、日本経済新聞記事には「社内に数千人単位のAI開発者がいる。」とある。これらの企業には情報分野での技術蓄積が十分にあり、AIにも通じているから導入は進むだろう。

問題は流行りに煽られた企業だ。東洋経済オンラインにある企業リストを見ると心配になる。AI技術者が世の中にそんなにいるとも思えない。投資家が利用する会社四季報に載るのは経営指標として注目されたことを意味する。しかし、それが災いして、後々「AIブームは終焉した。」とならないことを祈りたい。