ドル高が止まりません。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が2017年の利上げ予想中央値を引き上げた結果、従来の年2回の利上げから3回への扉を開きました。おかげで、人民元の下落に拍車を掛けオフショア相場では最安値を更新する有様です。
そこでちらつくのが、”2017年版プラザ合意”。
NY屈指の高級ホテル”プラザ・ホテル”といえば、1985年の歴史的な合意から3年後にトランプ氏が買収したという因縁があります。それはさておき、トランプ氏が「為替操作国」と批判する中国をめぐって、行動に出ないとも限りませんよね?振り返れば11月の終わり、財務長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏は商務長官に就任する見通しのウィルバー・ロス氏とCNBCに出演し、人民元につき「ロス氏と緊密に対応する案件のひとつ」と回答していました。中国との直接対話の場である米中戦略経済対話(S&ED)の窓口がオバマ政権の国務省から再び財務省へ変わるだけでなく、商務省との二人三脚で対話を深めていくと考えられます。
そもそもS&EDの歴史をひも解くと、ムニューチン氏と同じゴールドマン・サックス出身でブッシュ政権時に人民元切り上げを狙い交渉にあたったヘンリー・ポールソン元財務長官が思い出されます。ちなみに当時、SEDでSとEDの間に&はありませんでした。
2006年12月に第1回が開幕したSEDは、ブッシュ政権最後となる第5回目で異変が生じます。未曾有の金融危機が米国を発火点に燃えさかり始めたため、両者は”貿易金融ファシリティ”を2008年12月に創設しました。米国の輸出銀行が120億ドル、中国側が80億ドル拠出し、合計200億ドルでスタートしたものです。
米中二国間での新・プラザ合意に、ポールソン元財務長官時代のアイデアを活用しないとも限りません。ファシリティを通じ両国間の貿易を支援すると同時に貿易決済資金を融通する枠組みを整備すれば、貿易戦争への懸念も和らぎドル高・元安の流れに歯止めを掛ける期待もあります。
2017版プラザ合意は、安倍首相も訪れたトランプ・タワーが舞台に?
中国当局は2015年11月、同国内銀行に対し企業による海外送金の上限を5000万ドルから500万ドル相当へ引き下げました。ドル売り・元高介入を継続させる過程で、10月には2008〜09年からほぼ堅持してきた米国債保有高トップの座を日本に明け渡しています。共和党大会を2017年下半期に控え、さすがに中国としても過剰な元安から派生する中国株急落といった混乱は避けたいところ。中国を相手にしたプラザ合意では米国にとってドルの基軸通貨防衛に寄与する利点もあり、妥協を図る一手となり得ます。トランプ新政権と習近平主席率いる中国が足並みを揃えられるかどうかは、未知数ですが・・。
(カバー写真:Alan Light/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年12月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。