11月は都銀が中期債主体に大量に買い越す

12月20日に日本証券業協会は11月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

10月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し
単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -20620(758、-7871、-12087)
地方銀行 1678(1136、576、755)
信託銀行 9062(170、4925、923)
農林系金融機関 -3655(-3165、189、1)
第二地銀協加盟行 -1322(-810、-181、-30)
信用金庫 -3448(-1523、-1053、4)
その他金融機関 -222(-174、395、-27)
生保・損保 -5786(-5480、88、83)
投資信託 -254(198、-623、586)
官公庁共済組合 737(-170、626、234)
事業法人 -353(-87、0、0)
その他法人 269(-219、310、338)
外国人 -11672(2275、-2448、-10674)
個人 218(-1、21、4)
その他 3269(9421、-1547、-1093)
債券ディーラー -400(-74、-442、194)

9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において、金融政策の総括的な検証を行ったことに加え、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。

11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏が勝利したことをきっかけに金利高、ドル高、株高が起き、これはトランプラリーと呼ばれた。12月のFOMCでの利上げ観測が一層強まり、米長期金利はあっさりと2%台に乗せてきた。日本の国債の利回りも上昇し、日銀は11月17日に中期ゾーンの利回り上昇抑制のため、初の国債の指し値オペをオファーした。

11月の国債の投資家別売買高をみると都銀は2兆620億円の買い越しと2兆円を超す買い越しとなっていた。都銀の国債売買高をみると10月の5兆167億円を上回り、5兆5900億円となっていたが、このうち中期ゾーンが2兆189億円と10月の1兆3826億円を大きく上回っていた。トランプラリーの影響に伴う中期ゾーンの売りと日銀の指し値オペ実施による買い戻しに都銀は大きく関わっていた可能性がありそうである。

中期ゾーンと言えば海外投資家の売買が中心を占めていたことで、こちらの動向も確認してみたい。外国人は1兆1672億円の買い越し。10月の買い越し額は5717億円に減少していた。10月はこれまで大量に買い越していた中期ゾーンを少額ながら売り越していたが、11月は再び1兆円を超す買い越しに転じた。海外投資家の全体の売買高をみると10月に比べ11月は増えていたが、中期ゾーンについては11月は10月より減少していた。海外投資家は11月はそれほど活発に動いていたわけでもなさそうである。

海外投資家の売買状況
月 売買高(マイナスは買い越し)、(中、長、超長期)、全体売買高、うち中期

4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513
5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315
6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055
7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036
8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718
9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124
10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534
11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912

中期ゾーンについては指し値オペの水準(2年債利回りで-0.090%、5年債利回りで-0.040%)が意識されて、上昇しづらい状況にいるが、10年債利回りは12月16日に0.1%に上昇している。超長期ゾーンの利回りも上昇しているが、日銀は通常の国債買入の買入額の調整で、上昇ピッチを抑えようとしている。この間に投資家がどのような売買を行っていたのか、12月の動向も要注目となる。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年12月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。