12月22日に政府は来年度予算案を閣議決定しました。2017年度予算案は一般会計の総額で97兆4547億円程度と、2016年度の当初予算を7329億円程度上回り、過去最大となります。どこまで増えていくのでしょうね。このタイミングで来年度の国債発行計画も公表されます。
来年度の予算案での新規国債(建設国債と赤字国債)の発行額は34兆3698億円となります。今年度当初予算からは622億円の減額となり、三次補正後では4兆6648億円の減額となります。歳入全体に占める国債の割合、つまり公債依存度は35.3%程度と今年度当初の35.6%から低下します。なぜ予算の総額は増えているのに新規国債の発行額は減少するのでしょうか。このカラクリの背景には、円売り・ドル買い介入で得た資産を管理する外国為替資金特別会計の運用益2.5兆円を全額一般会計の歳入に繰り入れたことがあります。
来年度の国債総発行額は153兆9633億円となり、これは今年度当初からは8兆2395億円の減額、三次補正後でみると15兆8365億円の減額となります。こちらの減額の理由は借換債が今年度当初から3兆354億円減額され、財投債が4兆5000億円減額されることなどによります。ただし、借換債の発行額の減少は一時的なもので今後は再び増加はしてくる予定です。
国債総発行額の153兆9633億円のうち、入札等で発行されるカレンダーベースの国債発行額は141兆2000億円となります。今年度当初に比べると5兆8000億円の減額です。発行総額とカレンダーベースの差額は個人向け国債発行や日銀乗り換え分となります。
個人向け国債については0.05%という最低保証金利が功を奏して人気化し、今年度の発行額が増加したことで、来年度は3兆円の発行予定となっています。今年度当初に比べ1兆円の増加です。
また来年度の日銀乗り換えは3兆円と今年度の8兆円から5兆円の減額となっています。日銀乗り換えとは、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというものです。
来年度の前倒債の発行限度額は56兆円(今年度の48兆円から大幅増額)となり、前倒債はかなり積み上がっています。前倒債というのは、借換債の弾力的な発行などを可能にするため、会計年度を越えて発行される借換債のことです。このように限度額が決められていますが、その範囲内で金融情勢などに応じた発行が可能となっており、すでに48兆円以上の国債が前もって発行されていることになります。これはいわば何かあっときのバッファーともいうべきもので、何かの事情で国債入札ができなくなった際にもこの範囲内で調整が利くことになります。
カレンダーベースの年限別の国債発行額をみてると、40年債が今年度当初の4000億円6回から、来年度は5000億円6回と増額されます。30年債は8000億円が12回と変わらず。20年債は今年度の1.1兆円12回から1.0兆円12回に減額、10年債は2.4兆円が12回から2.3兆円12回に減額され、5年債は今年度の2.4兆円12回が2.2兆円12回に減額され、2年債は2.3兆円12回から2.2兆円12回に減額されます。1年物短期国債も都合1.2兆円減額となります。10年物物価連動国債は4000億円の減額、流動性供給入札は1.2兆円増額となります。
これらはほぼ国債市場特別参加者会合などでの国債市場の参加者からの意見を組み入れた格好です。そもそも借換債と財投債が今年度から大きく減額されたこともあり、5.8兆円の減額が可能となりました。40年債の増額は流動性を意識したもので、流動性供給入札も同様です。20年、10年、5年、2年、1年で減額し、中期ゾーンは海外需要が2年債などより比較的少なく、マイナス金利で国内需要も少ないとみられる5年債が大きく減額されました。物価連動国債はそもそものニーズが少なく減額されました。ちなみに10年国債の減額は19年ぶりとなります。その間、ずっと増え続けていたのです。
中長期債が減額されたことなどで、平均償還年限は9年5か月に延びました。これはなるべく利回りの低いうちにより長い期間の国債を発行しておいたほうが、利回り負担の軽減に繋がりますね。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。