サウジの2017年予算は50ドルが前提?

サウジアラビアの2017年国家予算が発表された。
FTの湾岸担当記者であるSimeon Kerrが “Riyadh speeds reform alongside energy price rises” と題して報じている(東京時間、2016年12月23日午前3時頃)。サブタイトルは “Poorer Saudi to be compensated for loss of fuel subsidies” となっている。

これに見られるようにSimeonの関心は、経済改革の動きと一般国民への影響軽減策にあるようだ。だが筆者は、予算前提として原油価格50ドルを見込んでいるらしいことと、2015年10月の「IMFの警告(5年で外貨準備が底をつく)」が大げさだったことが確認できたことの方が興味深かった。

筆者の興味にしたがい、記事の要点を次のとおり紹介しておこう。

・サウジは2020年までに財政をバランスさせ、経済改革を深化させることを目指し、向こう2~3年かけて国内のエネルギー価格を国際価格に連動させることとした。

・2017年国家予算発表の記者会見でファーリハ・エネルギー相は、公共料金やガソリンへの補助金削減で困窮している貧しいサウジ国民は現金で補助を受け取ることになる、と語った。

・一年前の補助金削減と(今年秋の)公務員への福利厚生手当の削減は、財政赤字の縮小を狙ったものだが、生計費の増加は多くの国民の不満を買い、経済改革の方法への疑念を呼んでいる。

・ジャダーン財務相は、低中所得者への現金支給は「同胞(brothers and sisters)への悪影響を軽減すること」を目指したものだ、と語った。

・2017年の歳入は31%増で、財政赤字は2015年3,660億サウジリヤル(976億米ドル、以下米ドル表記とする)、2016年792億ドルだったが、2017年は528億ドルとなる見込み。前提としていると思われる50ドルは(an implied $50/barrel)は現在の価格より低いが、今年よりは高い。

・ファーリハ・エネルギー相が、石油価格は来年さらに回復するだろうと語ったことにより、午後の取引でBrentは¢66上昇し、$55.11となった(終値は55.05、WTIは52.96)。サウジの石油収入は1,280億ドルと、昨年想定したものよりより46%高く見込んでいる(700万BD@50ドル=1,280億ドル)。

・政府は今年、初めての海外向け175億ドルの国債を含め533億ドルの債券を発行した。財務省は、財政をバランスさせるためにさらに債券を発行する、と語った。銀行筋は2017年第1四半期にも海外向けイスラム債券が発行されるとみている。

・(補助金削減という)歳出削減と民間業者への代金未払いが2016年の経済成長を妨げ、投資家たちに、サウジには脱石油化の能力はないのでは、との疑念をもたらした。

・財務省によれば、2016年の非石油部門成長率は0.99%で、ここ何年もの最低水準にある。全体の成長率も、前年の3.5%に対し、1.4%にとどまる見込みだ。

・2016年の歳出は、前年に関連した280億ドルの未払分の支払いを除くと、2,200億ドルと見込まれている。未払い分を含めた歳出は、2015年の2,608億ドルに対し2016年は2,480億ドルとなる。

・2017年の歳出は2,373億ドルを見込んでおり、2016年より8%増加の見込み。これにはNTP(「ビジョン2030」実現のための、2020年までの国家改造計画)関連予算112億ドルが含まれている。

・財務相は、実業界の最大の関心事である民間部門への未払いはすべて支払った、と語った。銀行筋も、ここ数週間、巨額の資金の流れがあったことを確認している。

ふむふむ。
国民への現金での補助金支給という政策を、ファーリハ・エネルギー相が発言したということは、何か特別の意味があるのだろうか。

また、原油市場はこのサウジの予算に対して、どのような反応を示すのだろうか?
休暇シーズンに入り、今週初めからNYMEXの先物取引は連日8億バレル程度に減少している。先物曲線はフラットのままだ。

クリスマス休暇明けの来週、何か動きがあるのだろうか?
今年も、年末年始をゆっくり過せない人たちが多いのだろうな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年12月23日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。