「政治家がバカになる」仕組みを、そろそろやめよう

写真は直接本文とは関係ない、イメージ画像です

年末が近づき、僕のフェイスブックでも多くの国会議員の知人たちが、忘年会を回ったり、消防団の年末集会に足を運んでいるさまをアップしています。

笑顔で写真に映る彼らを見ながら、僕は複雑な思いに駆られます。

なぜなら、これは「政治家がバカになっていく」仕組みの一部だからです。

夜中に呼び出される国会議員

ある議員から、こんなエピソードを聞きました。

12時過ぎに寝ようと思ったら、支持者から電話がかかってきた。
「あんたのためにミニ集会やろうと思っているから、今から来てや」

新人議員だった彼は、そこまで言われたら行くしかありません。
しかし行ってもみんな酔っ払っているから、真面目な話にはなりません。
結局、「◎◯は俺が呼んだら来る」という地元有権者のメンツ維持に使われたわけです。

そんなの断れば良いだけ。我々一般人からすると、そう思います。
しかし、断ると言われるのです。
「▲△(同じ選挙区の対立候補の名前)は来てくれるんだけどなぁ」と。

次の選挙に勝たねば、政治はできません。地元活動という名前の選挙営業は、このようにして議員の時間を奪っていきます。そして、本を読み、資料にあたり、専門家と議論するような、肝心の政策の勉強の時間はなくなっていくのです。

小選挙区制の難しさ

小選挙区制は94年から日本に導入されましたが、それまでの中選挙区と異なり、選挙区エリアが小さいため、より狭い範囲の地元に密着しないと勝てなくなりました。

そうすると、国会議員といえども地元の祭りに出て、忘年会に出て、新年会に出て、なんとか会に出て、ということをしていかねば、生き残れなくなります。そこに政策の話がなくとも。

親から受け継いだ地盤がなかったり、若かったり、という非既得権益層の新規参入組は、不利な立場にさらされるわけです。

子育て世代には不利

夜中まで飲み会や会合に足を運ばねばならなくなると、どうなるか。子育て中のパパママが国会議員をすることが、極端に難しくなります。

そうすると、子育て層を代弁する政治家がいなくなり、発言もなくなるので、政治の場は常に(子育てをしていない層、主に)男性たちの論理で埋め尽くされます。

多様性のないところでは、多様性を学ぶ機会を政治家から奪います。こうして「政治家がバカになる」ことが後押しされていきます。

俺んところに、何してくれるの?

さらに悪いのは、飲み会に来た政治家に、有権者は「うちにも新幹線の駅つくってくれ」「商品券配ってくれ」と利益誘導をせがみます。

地域の困りごとを相談するのは、悪いことではありません。ただ、「共に問題解決をしていこう」というパートナーとしての姿勢なのか、

それとも「投票してほしいなら、利益もってこい」という「消費者」としての姿勢なのかは、大違いです。

多くの場合、有権者が消費者として振る舞うことで、国会議員たちはそこに最適化するために、地元利益の最大化に動機付けられ、

「日本全体としての最適」からは遠ざかっていきます。

鍵は有権者にある

解決策は、我々有権者が握っています。すなわち、我々が国会議員に対し「この新年会には、もう来なくて良い。本を読んだり、社会問題の現場に足を運んでほしい。それがあなたの本当の仕事だ」と言ってあげるのです。

「祭りに来てくれたから、一票入れる」

「ビールついでくれたから、応援する」

そうした悪しき慣習から、我々の代表たる国会議員たちを解き放たなければなりません。

我々の民度以上の政治家は、現れません。彼らは我々の期待するものに沿って、育っていきます。ならば我々自身が変わりましょう。

それが日本全体の最適のために、我々の未来のためになっていきます。

まずは今年の忘年会と新年会から。笑顔を振りまき、懸命に握手をする国会議員がいたら、声をかけましょう。

「ここはあなたのいる場所ではない」と。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2016年12月29日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。