昨年に引き続き、SBJ恒例の年末読者アンケートから独断と偏見で面白いQ&Aを拾ってみました。
■スポーツビジネス界で今年一番のストーリーは何?
1. レブロン・ジェームスがクリーブランドに優勝をもたらした(32%)
2. 選手が国家斉唱時に起立拒否することで社会問題にスポットライトを当てた(29%)
3. NBAがユニフォームへの広告掲出を許可(24%)
4. ラムズがLAに戻る(22%)
5. リオ五輪が大きなトラブルなく終了(20%)
6. スポーツ中継の視聴率が伸び悩む(20%)
⇒これはちょっと意外でした。もう少しDFSの合法化やNCAAのオバンノン訴訟の話題などが入ってくるかと思いましたが。やはりレブロンのスポーツ選手としての人気は突出したものがありますね。スポーツ組織が社会課題に対してポジションを明確に取って意思表示するようになってきたのは、以下の別の質問にもありますが、大きな流れですね。
■もっともイケてる(Hottest)スポーツ組織は?
1. NBA(65%)
2. NFL(44%)
3. NCAA(32%)
⇒昨年と1位と2位が入れ替わる結果になりました。次の質問にも関係しますが、NFLは迷走しているという印象をファンに与えているようですね。NFLが横綱だとすれば、NBAはエッジの効いた大関という感じでしょうか。NFLは「保守」、NBAは「革新」というのが業界人の思い浮かべるブランドイメージでしょう。
■誤った方向に進んでいるスポーツ組織は?
1. NFL(53%)
2. NASCAR(33%)
3. WWE(19%)
⇒NFLが苦戦しているのはやはり脳震とう対策でしょうね。簡単な問題ではないですが、どうしても競技の迫力が損なわれる方向に話が進み、選手やファンから総スカンを食らっています。これは後から歴史が評価するしかなさそうです。空気減圧疑惑やDV問題へのコミッショナーの振る舞いも上から目線でファンからは不評を買っていました。
■最も指導力のあるコミッショナーは?
1. アダム・シルバー(64%)
2. ロブ・マンフレッド(12%)
⇒この設問は毎年NBAコミッショナーが強いですが、今年もダントツでした。革新的な試みを行うのは大体NBAですね。今年もユニフォームに広告を入れてみたり、スポーツ賭博容認の論陣を張ったり、オールスター開催地を変更してみたり(後述)と、イノベーションを起こしています。今年発足した日本のB.LEAGUEもNBAに倣って「BREAK THE BORDER」というスローガンを掲げています。
■スポーツ選手は社会問題に対してフィールド上で意思表示すべきか?
・すべき(61%)
・すべきでない(39%)
⇒少し前まではスポーツ選手には政治的中立(Political Correct)な振る舞いが求められていましたが、ここ数年でスポーツ組織のValue Propositionが大きく変化し、社会課題を解決するツールとしての自覚を持ち始めてきたため、スポーツ選手に求められるものも変化してきました。
■スポーツ選手が社会課題にアクションを起こすことは有効か?
・有効だと思う(49%)
・影響なし(27%)
・逆効果だと思う(24%)
⇒前の設問に次いで、やはり社会やファンもこれを肯定的にとらえていることが分かります。スポーツ組織による社会課題解決機能は効果的だと認知されているということですね。
■NBAがオールスターゲームをノースカロライナ州から変更した判断をどう思うか?
・正しい判断だったと思う(75%)
・間違った判断だったと思う(15%)
・何とも言えない(10%)
⇒これも圧倒的多数で支持されていますね。NC州は通称「反LGBT法案」といって誕生時の性別のトイレしか使ってはいけないという法案を可決しました。今、Inclusiveな対応が求められるスポーツ界では、トランスジェンダーの選手にも配慮した環境整備が求められています。こうした流れに逆行したNC州に対してNBAはいち早く行動を起こしたわけです。
今年は特にスポーツの社会課題解決力にフォーカスした設問が新たに設けられていましたが、業界として大きなトレンドとして認知されてきたということでしょうか。この動き自体はNBAが約10年前から仕掛けたものですが、社会的に認知され、受け入れられるのに10年かかったということでしょうか。この流れは近々日本にも入ってくるでしょうね。
他にも面白いQ&Aが目白押しです。興味ある人はSBJを購読しましょう。
編集部より:この記事は、ニューヨーク在住のスポーツマーケティングコンサルタント、鈴木友也氏のブログ「スポーツビジネス from NY」2016年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はスポーツビジネス from NYをご覧ください。