皆さまは、話がスベったことはないだろうか。スベると悲惨である。「会話が続かない」「会話が盛り上がらない」、挙句の果てには「自分もあせり出して何を話していいのか分からなくなる」。大切な場所でスベったら目も当てられない。一流のビジネスパーソンを自称するなら、エッジの効いた話し方は覚えておきたいものである。
『おもしろい伝え方の公式』(JMAM)は、石田章洋氏(以下、石田氏)が12月に上梓した著書である。石田氏は、放送作家として「世界・ふしぎ発見!(TBS)」「TVチャンピオン(テレビ東京)」「情報プレゼンター とくダネ!(フジテレビ)」などを手がけ、三遊亭楽太郎(6代目 三遊亭円楽)の弟子として、三遊亭花楽京を名乗っていたことでも知られている。今回は元落語家ならではの話す極意について聞いた。
■スベらないたったひとつの方法
「スベる!」。これは、芸人にとって大変恐ろしい言葉だそうだ。私たちは芸人ではないが、スベりの程度によっては、やはり気まずくなるものだ。
「空気を読まないギャグを言って、スベったあとに、『うわっ、スベった!』」などと自らフォローする人もいますが、それは逆効果です。『スベったうえにウザい奴』と思われます。よほど心が強くないとそんな冷たい周囲の目には耐えられないでしょう。」(石田氏)
「そもそも、『スベる』のは、笑わせてやろうと考える下心から、ウケを狙いにいき外してしまうもの。あからさまにウケを狙って、ウソつぽいつくり話をしてみたり、芸人のフレーズをマネてみたりするなんてもってのほかです。」(同)
なお、石田氏は、スベりたくなければウケを狙わなければいいと力説する。そして「ハードルは下げて下げて下げまくれ」と。
「ウケを狙おうとする下心は、聞き手に伝わるものです。下心が伝わると、期待値が上がり、そのせいで、おもしろくなるはずの話もつまらなくなってしまうのです。そう考えると、話を切り出す時に、『この前、すっごくおもしろいことがあってさ』などと、いきなり聞き手の期待値を上げるのは避けたほうがいいのは当然のことです。」(石田氏)
「話そうとしていることがほんとうに爆笑を誘うものであればいいのですか、少々おもしろいエピソードを話すだけでは、すでに期待値が上がった相手はがっかりするだけでしょう。」(同)
他には、話すときの態度も大切とのことだ。特に、笑いながら話すのはNG。聞き手は冷めてしまうようだ。
「話が盛り上がったあとでなら、笑いながら話してもいいのですが、最初はマジメな表情で切り出しましょう。マジメな表情なら、ウケを狙っているとは思われません。マジメな顔でおもしろいことを話すというギャップが笑いを生みます。自然体で発したかのようなひと言で人を笑顔にする。そんな笑いを目指してください。」(石田)
どうやら、ウケようとする下心があると、ムダに上げたハードルが話をつまらなくするようだ。この点は留意しなければいけない。
■校長先生の話がつまらない理由
皆さんは、小学生、中学生の頃、校長先生の話を聞いたことはないだろうか。そして校長先生本人は頑張って力説しているのに、聞いているほうはうんざりしている。そういう場面に遭遇したことのある方は多いはずだ。
「おもしろい話をしたいなら、ひとりで話し続けるのはタブーです。むしろ相手に積極的に話をさせるのです。そもそも一方的に話し続けてしまうのは、人は本能的に話を聞いてもらうことが大好きだから。それを逆手にとって、会話の8割は相手にしゃべらせればいいのです。」(石田)
よく言われることだが、聞き上手はコミュニケーション上手だということだろう。さて、次に紹介する話を聞いてどのように思うだろうか。
「昨日、○子に誘われて、ベリーダンスのレッスンに行ったの。渋谷にあるビルの5階にスクールがあるんだけどね。先生がフランス人でグラマーなのよ。ルイーズつていう名前なんだけど、その先生が言うにはベリーダンスはフランス語で腹踊りなんだって。それでレッスンが始まったら~うんちゃらかんちゃらで」。これでは聞くほうが疲れてしまう。
自分が話す側に立ったら話しすぎてはいえない。もし話すことがあるなら伝えたいことをワンセンテンスで話す。これが鉄則なのだろう。話す力を高めることは、社会を生き抜くための「武器」になりうる。なお、本書はケースにリアリティがあることから上司のコネタとしても役立ちそうだ。
尾藤克之
コラムニスト
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