経営者が冷徹になるためには?

荘司 雅彦

社長室

確率思考の戦略論」という本を読んでいたら、企業経営者やアングロサクソン系にはサイコパスが多いという記述がありました。さすがに真のサイコパスがそんなにたくさんいるはずはないので、おそらく「サイコパス的人間」という意味なのでしょう。

同書で書かれているサイコパス(サイコパス的人間)の特徴は、「ルールをねじ曲げてでも勝とうとする」「情け容赦なくリストラをする」「信義よりも勝ち負けを優先する」・・・というような人物です。

そういえば、以前、英国のチームと試合をした日本選手が次のようなことを言っていました。「彼らは審判の目が届かないスクラムの中で平気でゲンコツで殴るルール違反をやる。そのくせ試合が終わるとユニフォームを交換して抱き合う。なにがジェントルマンだ!」これも、アングロサクソン系にサイコパス的人間が多いと考えれば、大いに納得のいく話です。

アングロサクソン系の国々と違って日本ではサイコパス的人間は好まれず、情や信義に暑い人物が好まれます。サイコパス的である大久保利通よりも情に厚い西郷隆盛の方が人気があるのは、その一例だそうです。

企業経営者にサイコパス的人間が多いという点では、人相学的にも面白い関連性があります。「卒アル写真で将来がわかる」という本によると、「横広型の顔の男」が殺人等粗暴犯の加害者には圧倒的に多く、逆に「縦長型の顔の男」の多くが被害者になるというようなことが書かれていました。

同書の「横広顔の男」の写真を見て一つだけ特徴を挙げるとすれば、両目の外側と顔の輪郭との間が広いということだと私は感じました。顔そのものが横に広がっているという単純なものではなさそうです。

そして、「横広型の顔の男」は、企業のやり手経営者にも多いそうです。日本の著名な経営者の顔写真をよく見ると、けっこう「横広顔の男」を見つけることができるので、一度やってみると面白いですよ。

「横広顔の男」がルールを守らず粗暴でありながらも、企業間競争に勝っていく力を持っているとすると、「横広顔の男」がサイコパス的人間とほぼ同じであることに気づきます。「横広顔の男」を女性が結婚相手に選ぶのは、個人的には決してお勧めしません。おそらく、彼らの多くはDV夫になる確率が高いでしょうから。

では、サイコパス的でない日本の経営者がアングロサクソン系のサイコパス的経営者に勝つにはどうすればいいのでしょう?

最も簡単なのは、有能な外部参謀を持つことでしょう。
かつて、顧問先の社長が「長い取引だから切れない」とか「(いくら不良社員でも)辞めてくれとは言いにくい」というような悩みを私に打ち明けたことが何度も何度もあります。心情的にドラスティックなことができない善良な方々が多かったですから。

そういう時、「社長、鬼のような顧問弁護士がうるさいんだよ。やらないと会社がつぶれて従業員を路頭に迷わせると私を脅すんだ。と、私極悪人にして説得して下さい」とアドバイスしていました。

もちろん私は鬼ではありません(笑)しかし、顧問先企業の取引先や従業員との人間的つきあいは極めて希薄で、しかも、あくまで仕事としてアドバイスしている立場なので「冷徹なこと」をいくらでも言えるのです。
私自身の取引先や従業員に対しては「とうてい言えないこと、やれないこと」も、外部者であり仕事としてであれな痛痒を感じることなくできてしまいます。

みなさんにも経験があるでしょう。自分のことだと相手に言えないような厳しいことでも、友人の代理としてであれな”厳しすぎる”ことまで言ってしまったことが。
「〇〇のことをどうするのよ!私だったら我慢できるけど、〇〇は純情で傷つきやすいの。あなたには責任感とか良心とかはないの!」というふうに。いや〜、自分のことだとしたらとても言えないですよね(笑)

外部参謀を使う場合は、優秀なだけでは不十分です。必ずバランス感覚を兼ね備えた人物を選びましょう。法曹用語でいえば「落としどころ」をピンポイントで探れるような人物と言うべきでしょうか…。

なぜなら、完璧な戦略で「冷徹」にイケイケドンドンやってしまうと「窮鼠猫を噛む」となって、思わぬしっぺ返しを喰らいかねませんから。また、社会的な評価なども総合的に斟酌する必要があります。

100%勝てる勝負であっても、99%にとどめておいて相手に1%の満足感を与える解決こそが望ましいのです。
「一寸の虫にも五分の魂」と言うではありませんか。

話し上手はいらない~弁護士が教える説得しない説得術
荘司雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2014-08-26

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。