2017年、流行語予測!(働き方・子育て編)

駒崎 弘樹

こんにちは、厚労省イクメンプロジェクト座長の駒崎です。

過去、まぐれでイクメンという言葉を我々のチームで流行らせました。(完全にまぐれです)

昨年は、「保育園落ちた日本死ね」というブログに解説記事を書き、それが思いのほか拡散されたことで、なぜか流行語大賞に「保育園落ちた」がノミネートした際に僕が炎上しました。

そんな僕が、大胆にも2017年の流行語を予測します。

ワンオペ育児

もともと「ワンオペ」は外食産業等でアルバイト等に一人でオペレーション全てをさせる行為で、「すきや」によるワンオペ営業と、その過酷さによって人口に膾炙した言葉でした。

それが、育児分野にも適用され、広がっていきます。

「うち、平日は完全にワンオペ育児だわ」

「それな。うちも夫が遅いからワンオペだけど、その分土日は向こうにワンオペさせてる。でももう限界」

などという会話がそこかしこで聞かれるようになります。

この「ワンオペ育児」という言葉が広がるにつれ、「育児というのはそもそも一人でやるものではないのにも関わらず、一人で(主に母親が)やらされている」というニュアンスも共に広がります。

ブラック夫

妻にワンオペを強いる夫は、たとえ一生懸命働いていても、リスペクトされなくなります。家庭という共同事業において、責務を果たしていないとみなされ、「ブラック夫」と烙印を押されていきます。

「うちの彼氏、まじ「ブラック夫」になりそう

「えー、でも金融系勤めてて、ハイスペ(ハイスペック)なんでしょ?」

「でも、この前のホムパ(ホームパーティー)で、全く皿とか洗わないで、「なんかあったら手伝うから言って」とか言ってて、私が家事やるの当たり前みたいに接してくるわけよ」

「あー、それはシグナル出てるかもね」

というように活用されます。

しかし、この「ブラック夫」も、ある意味被害者です。「ブラック企業」によって長時間労働の牢獄に入れられてしまったら、家に帰って寝るしかありません。ブラック企業が、ブラック夫を量産し、家庭の幸福を奪っている、ということでもあるのです。

戦略的な「不便化」

そんなブラック企業の代名詞として、昨年パブリックエネミー化したのが、電通です。電通は社長が辞め、上司も書類送検されましたが、働き方の限界にきているのは、電通だけではありません。

例えば、年末には佐川急便のオペレーションがパンクしました。全国的に遅配が発生し、荷物をぶん投げる動画等がネット上を駆け巡りました。ネットショッピングの拡大に、人手不足の現場が追いつかないのでしょう。

こうした、「現場の限界」に対し、企業が消費者の理解を求めつつ、サービス水準を切り下げる「不便化」が進むでしょう。

例えばアマゾン等のネットショッピングでは「当日配達」等、スピードが重視されていましたが、「急ぎません」ボタンが実装され、そしてかなりの消費者が「急ぎません」を選択していくことで、物流の不便化を促進します。

また、先月、すかいらーくやロイヤルホスト等が24時間営業をやめることを発表しましたが、この動きが他のコンビニチェーンや牛丼店等にも広がります。

企業は多少不便化しても、売上は減るけれど利益は減らないということに気づき始め、戦略的に不便化を推し進めていき、それが他分野にも波及していくことが予想されます。

イクボス宣言

人手不足への対応が戦略的課題、ということに気づき始めた企業は、相次いで働き方改革プロジェクトチームを立ち上げます。しかし、そこでのネックが中間管理職、「ボス」たちだと気づき、彼らの意識改革を行えるよう、努力し始めます。

まずは社としての姿勢を見せよう、ということでイクボス宣言をしていくことが広がっていきます。これに拍車をかけるのは、全国の市長・県知事たちのイクボス宣言と、大臣たちのドミノ式のイクボス宣言です。

2016年末に、塩崎厚労大臣と事務次官ら幹部が、若手官僚からの強いプッシュの末、イクボス宣言を行いました。これを受けて、他の省庁でも「やらないとまずいですよね。あ、やっぱりそうですか」という感じで、大臣達のイクボス宣言が行なわれます。

都議会議員選挙前に、劣勢の自民党のイメージを良くしよう、という思いも絡まり、総理自らイクボス宣言をしようとしますが、その直前に蓮舫民進党党首が「党首としては初」をゲットすべく、滑り込み宣言します。

これで、「深夜の質問通告」を連発すると、お前言ってること違うじゃん、というタレコミが省庁からメディアに流される美しいルートができ、官僚酷使の伝統様式に徐々に変化が見えてきます。

男性産休

安倍政権の女性活躍路線は引き続き継続しますが、そこに立ちはだかる壁が男性の働き方、ということは2017年も変わりません。その変化の省庁は男性育休ですが、育休はまだまだハードルが高く、なかなか導入企業は広がりません。

しかし、その代わり、「男性産休」は広がります。これは、公務員や大企業等で実施されている「配偶者出産休暇」や「育児参加休暇」そして「有給」を組み合わせて、子どもが生まれた際に夫側が1~2週間休むことです。

育児参加休暇がない中小企業でも、慶弔休暇2日と、有給3日を組み合わせて、1週間休むことはできます。政府はこの育休よりもハードルの低い、「男性産休」の取得を前面に押し出して、推進を呼びかけます。

「子どもができたら、パパは1週間は休むのがデフォルト」

「身内が死んだら休むのが当然なんだから、産まれたら休むのも当然」

「1週間で、パパOSをインストールしよう」

というようなスローガンが広がり、先進的な企業で次々に制度化されていきます。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月3日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。