養子の中で自己肯定感を感じる子の割合は、全国の中3の2倍

駒崎 弘樹

日本で初めての、特別養子縁組によって迎えられた養子に直接聞く形式の調査結果が、先月発表され、メディアでも報道されています。

<養子縁組>10~17歳の9割「養親の愛情を感じている」 (毎日新聞) http://bit.ly/2hRC7Lr )

養子縁組家庭に関するアンケート調査結果(概要版)

そこでの調査結果が非常に興味深かったので、特別養子縁組事業者のはしくれとして、ここで取り上げていきたいと思います。

まず興味深かったのが、自己肯定感の高さ。

養子縁組世帯の方が、自己肯定感を感じる割合が高い

養子が自分自身に満足している割合.png

「自分自身に満足している」かどうか、という質問に対し、「そう思う」が25.8%でした。これは平成23年に内閣府が全国の中学三年生を対象にした調査(出典:平成23年度「親と子の生活意識に関する調査」)の12.5%と比べ、2倍高い結果となります。

養子縁組家庭の子どもは、「自分自身に満足している」かどうかに対し「どちらかといえばそう思う」という穏やかな自己肯定まで含めると、70.7%が満足している状況になっています。

これは、全国の中三生と比較すると、彼らの「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を足しても46.5%なので、約5割ほど自己肯定感が高い層が多いことになります。

養子が自分に長所があると思う割合.png
また、「自分には長所があると感じている」かどうかについても、「そう思う」は養子縁組家庭においては43.2%、全国の中三は26.8%と、6割ほど高い結果となっています。

親から愛されていると感じている

養子が親から愛されていると思う割合.png
子どもの健全な発達において、親や周囲の大人から愛情を受けることは、非常に重要です。「親から愛されていると思う」かどうかについても、養子縁組された子どもたちは63.5%が「そう思う」と答えており、全国の中三生の「そう思う」は45.5%なので、約4割ほど高い数値となっています。

まとめると、養子である子ども達は、よくあるイメージの「かわいそうな存在」なんかでは決してなく、「親から愛され、自分もしっかりと愛せる」存在なんだ、と言っても良いのだと思います。

もちろん、今回の日本財団調査対象と、内閣府調査の対象年齢は完全に一緒ではありませんし、サンプルデータのサイズも違うので、apple to appleではなく、単純に直接比較できるものではありません。しかし、我々に新しい視点を与えてくれるものであることは、間違い無いのではないでしょうか。

なぜ良い結果に

本調査は、「ではなぜ養子縁組家庭において、自己肯定感が育まれるか」また、他の社会的養護と比較して学業の状況も良い理由ついては答えていませんが、そのヒントとなるデータはある程度提出されています。

例えば、自己肯定感については、

・子どもと夕食を共にする頻度が一般世帯よりも多い

子どもに本や新聞を読むことをすすめている世帯の割合や子どもが小さいころに絵本の読み聞かせをしていた割合、子どもが自然に触れる機会を作っている割合なども軒並み高くなっている。

また、学業については

・特別養子縁組家庭の平均年収は約727万円で、全国平均の約571万円と比較して高い点

・それに伴い、塾代などの教育投資が一般世帯よりも高い

ということです。

現在、養子縁組を希望する養親の層は、一般的には教育水準が高く、収入が安定している世帯が多いことが、こうしたデータに反映されているのでしょう。

また、養子縁組団体の方でも、養親の選別の段階で、収入水準や子どもへの関与度合いを一定程度考慮に入れて縁組を行っていることが、こうした正のバイアスがかかる理由になっているのではないかと推測されます。

養子縁組後進国の日本のこれから

最後にまとめます。まず、特別養子縁組家庭に関する定量調査は中々なかったので、非常に意義深く、この点日本財団はグッジョブでした。

また、内容が世間で思われているイメージと異なり、子ども達にとってポジティブだったのは嬉しいことです。また、特別養子縁組事業者として、自分たちが縁組した後に、自己肯定感を持って生きてくれる子ども達が多い、というのは、仕事の励みになるものです。

特別養子縁組という手法自体は、やはりデータからも肯定しうるので、今後はこの社会インフラを大きく広げていかねばなりません。しかし、日本は養子縁組後進国で、まだまだその恩恵に預かれる子ども達はわずかです。

111106feature2_2_1_big_000.jpg
111106feature2_2_2_big_000.jpg

(図表は 朝日新聞GLOBE http://bit.ly/2i37sKRより引用)

多くの良き養親(育ての親)達が必要です。我こそは、と思うカップルの方々は、まず知ることから始めてみてください。そして、週末里親からやってみたり、あるいは特別養子縁組団体の説明会に顔を出しても良いかもしれません。できるところから始めてみてほしいです。

全ての子ども達に、温かな環境を。これからも特別養子縁組事業者として、頑張っていきたいと思います。

追記

(子どもの人生を背負う覚悟を持って)養親になりたい、という方は、ぜひお問い合わせください。

 


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年1月7日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。