米国がアクセシビリティ技術基準を改定する

米国連邦政府のアクセスボードが、1月10日に、アクセシビリティ技術基準について説明会を開催する。アクセスボードは、わが国では内閣府に設置された障害者政策委員会に対応する組織で、連邦政府の障害者政策の中枢である。

障害者の社会参加を促進するには、障害者が利用できる機器・施設・サービスが市中に提供される必要がある。どのような機器などであれば利用できるかの基準を定めるのが、アクセシビリティ技術基準である。米国では1990年代頃から多くの分野でアクセシビリティ技術基準が作成され、運用されてきた。その後の技術進歩や社会環境の変化を反映して、今回、三種類のアクセシビリティ技術基準が制改定されることになった。

昨年12月14日に改定されたのがバスやバン(この場合には小型バス)についての技術基準である。たとえば、乗車時に車高を下げたり、スロープを備えたりといった基準が書かれている。今回は、車高変更のほか、路線バスは次のバス停の名称を表示するだけでなく音声でも案内する、といった基準が追加された。

1月9日に公表されるのは、医療検査機器に関する基準である。検査台と椅子、体重計、放射線装置、マンモグラフィ装置に関するアクセシビリティ技術基準がはじめて制定される。

間もなく公開されるのが、情報通信機器・サービスに関する技術基準である。米国ではリハビリテーション法508条に基づいて、連邦政府自体と連邦政府資金が提供されている組織が情報通信機器・サービスを調達する際には、この技術基準を満たすことが義務付けられている。義務に反すれば裁判にかけられる。現行基準は2000年に制定されたもので、技術進歩を反映するように2006年から改定作業が実施された。その後、連邦政府内での調整や欧州技術基準との整合などに長い時間がかけられてきたが、やっと完了し、このたび改定されることになった。僕も2006年からの改定作業に参加していたので感慨深い。改定基準は特定の技術に依存しないよう技術中立性を守って作られているので、最新技術にも対応できる。

わが国の障害者政策委員会も政府の司令塔として障害者政策全体に目配りしているが、まだ、アクセシビリティ技術基準の制定にまでは進んでいない。米国のように基準に違反した場合には裁判が待つという方向に動くことが求められる。アクセシビリティ技術基準は障害者の社会参加のための基準であるが、乗り降りの際にバスの車高が下がったり、テレビ放送に字幕が付けば、高齢者にも役立つ。高齢化が進展するわが国で求められる政策である。