まあ、有権者の方々のご判断だが、私は選挙に出て当選したからと言って政治家として何かしらの禊をしたことにはならないと考えているので、一審無罪、控訴審で逆転有罪で執行猶予判決となった市長さんには任期途中での辞職と再選挙への立候補はおススメしない。
ご本人は、無実を訴える以上は、一旦辞職して出直し選挙に臨む方が潔いし、市民の理解も得られやすいとお考えになったのだろう。
しかし、刑事裁判で無罪を争うのと選挙で有権者の信を問うのでは大分趣が異なっており、出直し選挙で当選しても市長としての任期が延びるわけでもなく、選挙の結果で有罪判決が無罪にひっくり返るわけでもないから、裁判は裁判で全力を尽くされた方がよかったのではないかな、と思っているところだ。
逆転有罪判決を言い渡した控訴審裁判所は被告本人に対しての尋問をしないままに原審判決を引っ繰り返したそうだ。
当事者に納得のいく丁寧な裁判を実現すべきだと考えている私の立場から言っても、控訴審の審理の進め方には問題があるだろうと思っているが、どうやら控訴審では原審では法廷に顕出されなかった様々な間接証拠が提出され、控訴審の裁判官はこれらの間接証拠なども重視して心証形成したらしいということが分かってきている。
事実の認定は控訴審までで最高裁はあくまで法律審であるということなどを考えると、控訴審の有罪判決を引っ繰り返すのはなかなか難しそうな事件だな、というのが私の率直な感想なのだが、上告審の最高裁判所が控訴審の裁判を引っ繰り返すほどの審理の不尽や憲法違反、判例違反、経験則違反(重大な事実誤認や法令違反、その他職権破棄事由と言われるものなど)があるのかどうかについては、何とも言えない。
まもなく美濃加茂市長選挙が告示されるが、最高裁で原審判決がひっくり返らないという事態にも備えて、関係者の皆さんは今からそれぞれに準備された方がいいだろうというところである。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年1月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。