あと数ヶ月もすれば新人が入社してくる。新人教育でまず必要なことはマナーと考えている人も多いことだろう。では、次のシチュエーションを提示したい。お客様とエレベーターの中で2人っきりになったら、あなたはどうすべきだろうか。
西出ひろ子(以下、西出氏)は、マナー講師である。主な著書としては、28万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研) があり、2010年「NHK大河ドラマ・龍馬伝」にてマナー指導を担当するなど活動は幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師として知られている。
■エレベーターで話すことはマナーではない
――エレペーターの中でも、マナーは存在する。あなたを歓迎しているというサインを送るために、話したほうがいいのだろうか。それとも、周りのことを考えて黙っているほうがいいのだろうか?
「エレベーターは、西洋からきたものです。私が以前イギリスで生活をしていたときに、エレベーターの中では会話をしないというマナーを教えてもらいました。たしかに、イギリスのオフィスビルでも、駅のエレベーターなどでも、エレベーター内で会話をしている英国紳士や淑女はいません。」(西出氏)
「本来、エレベーターでは会話をしないのがマナーなのです。アメリカなどではエレベーターの中での一瞬のトークがビジネスになる、といった話もあります。”エレベータートーク”と呼ばれることもあります。」(同)
――ところが、エレベータートークは周囲への配慮という観点で考えるとNGだそうだ。
「エレベーター内に、他の人がおらず自分たちだけであれば、OKです。エレベーターに乗っているその時間を一瞬たりとも無駄にせず有効に使うことは、ビジネスとして大切な姿勢です。その結果、ビジネスが成立すればそれに越したことはありません。とはいえ、自分たち以外の他人がいる中では、会話を控えるのがスマートな頭がいい人が行うことです。」(西出氏)
「頭がいい人は、周囲を見渡し、周囲に配慮する心や気持ちを持っています。そして情報漏洩の危険性があることなどは行いません。だからエレベーター内では無言でいいのです。」(同)
――これは非常に明快な回答である。エレベーターに乗っていた社員が、お客様の悪口を話していたことが原因で取引停止になったような類の話は少なくない。エレベーターの中は私的ではなく公的な場所になるから、慎重さが要求されるのである。
■公共の場での会話には細心の注意を
――エレベーターの中では、情報漏洩による会社の損失を避けることを優先させなくてはいけない。会社に損失をもたらせば信頼も失墜してしまう。
「電車内や会社内の化粧室(トイレ)、居酒屋などでも、ビジネスや会社の話をする人がいますが、誰が聞いているかわかりません。本来話さなくてもよい場所で、話をしなくてもいいのです。」(西出氏)
「ビジネスの話や上司、同僚などの情報を、公共の場で話してしまうのは、会社の機密情報ではないにしても話さないほうが無難です。お昼休みなどにランチに出かけるときのエレベーターなども要注意です。」(同)
――何気ない会話でも大きなリスクになることを理解しておきたいものである。頭がいい人は、公共の場で仕事の機密情報を漏らさない。残念な人は、情報をダダ漏れにする。果たしてあなたはどちらだろうか。
参考書籍
『頭がいい人のマナー 残念な人のマナー』(すばる舎)
尾藤克之
コラムニスト
<お知らせ>
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