豊洲と築地の地下水を比較考量せよ

開場の見通しが立っていない豊洲新市場(写真ACより:編集部)

地元の選挙の真っ只中ですが、午前中の活動を終えて、まもなく午後の街頭演説に出掛ける合間を縫って、一言だけ、東京の豊洲問題について、備忘的に書いておきたいと存じます。今や豊洲問題は国民全体の関心事、「足は地元に、心は国に、眼は世界に。」をモットーに掲げる私としては看過できないのです。

1.法律上、何の問題もない豊洲市場

まず、豊洲市場への移転は、国の土壌汚染対策法といった環境政策の観点からは、今でも可能です。環境大臣がそう宣言すれば少しは議論が整頓されると思うのですが、豊洲市場自体は東京都の自治事務なため、あまり国が口を出すのはよくないという点から東京都の取り組みを傍から眺めているのだと思います。

土壌汚染対策法には、地下水を飲んだりして健康に影響を及ぼす恐れがある「要措置区域」と建物を建てる時等に工事の方法等をチェックする「形質時変更要届出区域」の2種類があり、豊洲は後者です。ところが東京都は、石原都政の時代に“豊洲ブランド”を構築する観点から、独自の基準を定めたのです。

東京都政は、独自基準を満たす石原都政の豊洲ブランド化プロジェクトには失敗しましたが、小池知事であれば、そうした失敗を乗り越え、新しい枠組みを都民に提示し,豊洲移転を実現することができると信じます。日本維新の会は、そうした都政の取り組みを全力で支援していくべきであると考えています。

2.政治利用すべきでない環境問題

私は、「要措置区域」でもない豊洲の地下水に環境基準を設定すること自体が、ナンセンスであり、有害でさえある、と考えています。そもそも豊洲から運び出された汚染土壌は57万㎥。全国で毎年発生する汚染土壌が89万㎥ですから、それに匹敵する膨大な汚染土壌が豊洲以外の市町村に運ばれたのです。

安全安心を求める気持ちは、東京都民も、大阪府民も、どこの県民も、同じです。「都民ファースト」も外部性がなければ結構ですが、他の都道府県、他の市町村に不要な負担をかけてまで豊洲ブランドを構築することを、本当に都民は望んでいるのでしょうか。ほどほどの対応を東京都に求めたいと存じます。

なお、地下水については土壌汚染対策法、地下ピットに労働者が立ち入る場合には労働環境衛生法等があり、法律に従って日本は回っているのです。それは環境問題に外部性があるからです。Aに過剰な安心を求めればBに危険を幅寄せすることになる、これが私が環境問題の政治利用を非難する所以なのです。

3.豊洲と築地の地下水を比較考量せよ

政治家は学者でもなければ評論家ではありません。既に豊洲に投資した税金はサンクコストなのですから、現在の築地と現在の豊洲について、その環境を厳正に評価、維持更新費用も冷静に比較した上で、都民にとってベターな方を選ぶしかないのです。東京都はすぐにも築地の環境評価に取り組むべきなのです。

石原都政が専門家の理想論的提言を使って、無理に豊洲移転の合意形成をしたのであれば、その過去についても都は清算しなければなりませんが、そのためにも政権交代があるのです。公務員だけではとれない責任を政治家は取ることができる。新しい小池知事だからこそ再び都民を説得することができるのです。

なお、一昨日14日に開催された第4回の専門家会議では、地下水の汚染状況に加えて、地下水をくみ上げ排水する「地下水管理すステム」で計測している排水が水道法に規定する下水排除基準を満たしていることも報告されました。マスコミには、こうした重要な点も的確に報道する見識を求めたいと存じます。


編集部より:この記事は、衆議院議員・足立康史氏の公式ブログ 2017年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は足立氏のブログをご覧ください。