トランプ次期大統領、就任式前の週末に吠える!ツイッターはもちろん、米国のほか英独メディアに対しインタビューでトランプ節を炸裂し、あらためてその貴重な存在感を際立たせています。ざっとご紹介すると、以下の通り。
●自動車メーカー含む企業に「米国での生産活動」を求める=ツイッター
●FBIなど情報機関をまた非難=「クリントン氏は有罪」=国家情報長官はロシア関連の未確認情報につき情報機関のリーク否定、ツイッター
●「ひとつの中国を含め全てが交渉の対象となる」=WSJ紙
●「中国は明らかに為替操作国だが就任初日で認定するようなことはせず、まず交渉から入る」=WSJ紙
●「少なくとも暫くは制裁を継続も、ロシア側が米国の力となるならば、制裁を科す必要はない」=WSJ紙
●「他の欧州連合(EU)加盟国も英国に追随して離脱と予想」=独ビルト紙
●「NATOは時代遅れ」=国防長官候補と意見分かれる、独ビルト紙
●独BMWのメキシコ製自動車に「35%の国境税」課す方針=独ビルト紙
●「英国のEU離脱は成功に終わるだろう」=英タイムズ紙
●メルケル独首相は難民政策で「重大な誤り」と指摘=英タイムズ紙
●ロシア経済制裁解除と引き換えに「ロシアと軍縮合意も」=英タイムズ紙
北大西洋条約機構(NATO)やロシアをめぐっては公聴会で表明した国務長官候補のティラーソン候補の見解並びにマティス国防長官候補と反対の立場を取り、同じくロシアのサイバー攻撃に関わる問題におけるジョン・ケリー国土安全保障長官候補と意見を異にしました。
一連の過激な発言が、トランプ次期大統領とロシアを結び付ける疑惑の炎を絶やしたわけではありません。同氏が11日の記者会見で偽ニュースと糾弾したCNNとバズフィードと言えば、前者がロシア政府とトランプ氏への親密な関係を纏めた情報機関の2ページ資料をスクープし、後者が続いて35ページに及ぶ詳細のレポートを公表しました。英国諜報機関MI6の元職員で民間調査会社オービス・ビジネス・インテリジェンスの幹部であるクリストファー・スティールなる人物が執筆した詳細資料は事実確認されていないものの、米上院の情報委員会がロシアが2016年に米大統領選に介入した疑惑に対し超党派で調査を実施すると発表。リチャード・バー委員長(共和党、ノースカロライナ州)とマーク・ワーナー議員(民主党、バージニア州)と連名でリリースした声明でトランプ政権関係者にも「必要であれば召喚状を送る」との文言を盛り込んでいます。
政策を語るより、目の前に浮上する疑惑を取り払う必要が生じたトランプ次期大統領。35ページにわたる資料ではロシア人娼婦との猥雑な行為が含まれるため、政権発足後にアメリカ国民の支持を高められるかは疑問が残ります。
一連のニュースが報道される前だというのに、トランプ次期大統領の支持率が低い点も懸念材料です。ギャラップの調査では自動車メーカーを中心にメキシコ工場新設を阻止した手柄はどこへやら。不支持率が51%と、クリントン政権発足時以来で最悪を更新しました。
民主党政権発足前のみ3回の調査結果を発表しているのは、フェアではありませんけどね。
一因には、閣僚並びに政権メンバーへの不信感が挙げられます。
閣僚・政権入り候補者に対し、「平均以上」との回答はクリントン政権発足前と同じ水準でした。ただし、トランプ新政権では「平均的」が20%に対し、クリントン新政権では52%と倍以上の開きが生じています。さらに「平均以下」との回答はクリントン新政権が12%に対し、トランプ新政権は44%で他の歴代大統領と比較しても突出して高い。それぞれ分野で実績のある方々が勢ぞろいするとはいえ、総資産300億ドル超の3G政権に対し期待値は決して高くはありません。
トランプ次期大統領にしてみれば、ギャラップの調査も「偽ニュース」と一蹴すべき結果なのでしょう。ただトランプ氏自身は、聴衆を沸かせる術を熟知しているはずです。どのような手段でアッと言わせるのか、米大統領就任式が楽しみですね。
(カバー写真:My Big Apple NY in Washington D.C.)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年1月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。