朝日新聞が記事『偽ニュース、防ぐ切り札は 米大統領選契機、報道機関や政府が対策』を1月21日に掲載した。フランスとドイツでの取材を主な内容とする大きな記事であった。
フランスでは、ルモンド紙がサイトの信頼性がわかるツールを開発中で、2月にも発表するという。偽ニュースのサイトは「赤」、ジャーナリズムの手続きに従っていれば「緑」、パロディーは「青」など、信頼度が色で示される仕組みになるという。
朝日新聞は「緑」と表示されるだろうか。慰安婦や福島原子力発電所の事故報道で、朝日新聞が謝罪会見を開いたことは記憶に新しい。他にもおかしな記事が多数あるが、その多くは一方的に偏った内容が書かれたものだ。記者あるいは新聞社全体が「××は善、××は悪」と決めつけて取材するのでこんな記事が出てくる。特定の政党の機関紙と見間違うような記事は、ジャーナリズムの手続きに従ってはいない。
ネットにはサイバーカスケードという性質がある。同じ考えの仲間といる気持ちよさのあまり仲間からの情報しか信じなくなって、大衆が分裂し小衆化するのがサイバーカスケードである。ある小衆からは他の小衆は偽ニュースに見える。トランプはこの性質を上手に利用して、「米国第一」を信じる小衆を多数派にして大統領の座を奪った。
偽ニュースの中には「地震でライオンが逃げた」といった明らかに事実に反するものもあるが、上に説明したように思想信条の違いから相手が偽ニュースに見える場合がある。朝日新聞がサイバーカスケードを止めるのに役立ちたいなら、小衆の一方に偏って報道するのは避けるべきだ。
ドイツでは政府内に偽ニュースを監視する組織立ち上げの動きがあり、検閲との警戒感がジャーナリストを中心に生まれているという。朝日新聞の記事は、ドイツのこの状況を紹介したのち、最後に、識者による次のような意見を紹介している。
新聞などの既存メディアが厳しく監視しつつ、まとめサイトなどと連携して虚偽情報の排除に取り組むべきだ。
識者は民間による監視を主張しているが、政府による監視ではないから許されるのか。なぜ、新聞などの既存メディアにそのような監視の力を与えることができるのか。おかしな意見である。
偽ニュースへの対抗手段は監視ではなく、多様な意見があることをできる限り広く人々に知らせることだ。朝日新聞には、ネット上の小衆同士が意見を戦わせるリアルな紙面を提供していただきたい。