【映画評】マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ

渡 まち子
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(提供)松竹株式会社

NYの大学でアーティスト・コーディネーターとして働く30代のマギーは、半年と恋愛が続かない体質。大学時代の友人から精子をもらい一人で出産・子育てをしようと考えていたが、ある日、既婚の文化人類学者ジョンと出会い恋に落ちる。ジョンの妻ジョーゼットはキャリウーマンで、家庭を顧みない妻に疲れたジョンは、離婚して、マギーと結婚する。娘も生まれ幸せに見えた二人だったが、マギーは、仕事を辞めて小説家の夢を追うジョンとの結婚生活に不安を感じていた。そんな中、マギーはジョーゼットと親しくなり、知的で魅力的な彼女が鬼嫁ではなく今もジョンを深く愛していることを知る。ジョンはジョーゼットと一緒にいた方が幸せになれると確信したマギーは“夫を前妻に返す”というトンデモナイ計画を思いつくが…。

現代のNYを舞台に、離婚や再婚でこじれた男女の奇妙な三角関係を描くハートフル・コメディ「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」。不倫、離婚、略奪婚…などの言葉でストーリーを説明すると、ドロドロの愛憎劇を想像しそうだが、本作は、ウディ・アレン映画にも通じる、のほほんとした恋愛劇だ。主要登場人物のマギー、ジョン、ジョーゼットは、いい大人なのに、皆、自分勝手で不器用な人たちだし、現妻が前妻と一緒に、夫を返す作戦を練るという展開は、オペレッタや艶笑喜劇のよう。聡明だがドジでヘマばかりやってる主人公マギーは、恋愛下手のこじらせ女子なのだが、いつだって一生懸命で最善を尽くしている。マギーは、劇中にジョーゼットが彼女を評して言うせりふの通り、純粋でちょっとおバカなキャラクターなのだ。「フランシス・ハ」ですっかりNYを体現する女優になった感があるグレタ・ガーウィグは、大柄でもっさりとした体格や、端正だけど美人過ぎない北欧系の顔立ちのためか、そんなとぼけたヒロインが実に良く似合う。

冬のNYの風景、ダサ可愛いファッション、北欧風のインテリア、アーティスティックなグリニッジ・ビレッジのライフ・スタイルなど、女性誌が喜んで特集しそうなアイテムにあふれているインディーズ映画だが、よくみると、イーサン・ホークやジュリアン・ムーアなど、なかなかの実力派キャストが顔を揃えている。こじれた三角関係と、マギーの人生修復プランの行方は? それは映画を見てぜひ確かめてほしい。人間というのは、持ちつ持たれつで成り立っているんだなぁ…と苦笑してしまうお話だが、何とも憎めない小品だ。
【60点】
(原題「MAGGIE’S PLAN」)
(アメリカ/レベッカ・ミラー監督/グレタ・ガーウィグ、イーサン・ホーク、ジュリアン・ムーア、他)
(ハートフル度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。