オーストリアのソボトカ内相は23日、「17歳の容疑者はイスラム過激派テロ組織『イスラム国』(IS)を支持し、関係を持っていた」と指摘し、容疑者(Lorenz K)がサラフィストの背景を有していたことを明らかにした(注・前回のコラムでは容疑者の年齢を18歳としましたが、17歳に訂正)。
一方、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州のノイスで21日、ウィーンのテロ計画事件と関連して21歳の容疑者が拘束された。独週刊誌フォーカスによると、独の特殊部隊(SEK)がノイスの容疑者宅を奇襲し、逮捕した。ウィーンの容疑者Kはノイスで爆弾を製造していたというが、SEKが突入した部屋からは爆弾関連物質は見つからなかったという。17歳の容疑者Kは地下鉄、ウィーン西駅か多くの市民が集まる場所で手製爆弾を使った大量テロを計画していたという。
ウィーンの容疑者Kの共犯者として12歳のマケドニア系の少年が23日、治安当局の尋問を受けたという。そのニュースを聞いた時、12歳という年齢に驚いた。12歳がどのような役割を果たしていたかは不明だが、Kと頻繁に接触していたという。ちなみに、少年は14歳以下ということで拘束できないため、治安関係者の監視下に置かれている。
10年前の2007年9月、「子供部屋のテロリストたち」というタイトルのコラムを書いたことを思いだした。テロリストの年齢は当時、20歳だった。彼らは「アフガニスタン駐留の同国軍を撤退させよ」と要求し、「応じない場合、テロの対象とする」という脅迫ビデオを流した容疑だ。オーストリアのテロ対策特殊部隊コブラが容疑者の家に突入した時、彼らは子供部屋で休んでいたことから、オーストリアの大衆紙「エステライヒ」は「テロ対策特別部隊、子供部屋に突入」と報じ た(「子供部屋のテロリストたち」2007年9月15日)。
ドイツやオーストリアで発生したテロ関連事件の容疑者の年齢はそれ以降、年々、若くなっていく。実例を挙げる。
①ドイツ南部バイエルン州のビュルツブルクで昨年8月18日午後9時ごろ、アフガニスタン出身の17歳の難民申請者の少年(Riaz Khan Ahmadzai)が電車の中で乗客に斧とナイフで襲い掛かり、5人に重軽傷を負わせるという事件が起きた。犯行後、電車から降りて逃げるところを駆け付けた特殊部隊員に射殺された。目撃者によると、少年は犯行時に「神は偉大なり」(アラー・アクバル)と叫んでいた。少年は1年前に難民としてドイツに来た。保護者はいなかった。
②ウィ ーンの職業学校卒のオリバー・N(当時16歳)は2014年、イスラム教過激テロ組織「イスラム国」(IS)に入り、シリアでジハードに参戦したが、負傷して15年3月、ウィーンに帰国したところ、反テロ関連法違反で逮捕された。
③オーストリアでは2014年、15歳と16歳の2人のイスラム教徒のギムナジウムの少女が突然、シリアに行き、反体制派活動に関わったという情報が流れ、ウィーンの学校関係者ばかりかオーストリア社会に大きなショックを与えた。
オーストリア内務省のコンラード・コグラー公安事務局長は、「若者たちの過激化傾向は年々、早まってきている」と指摘している。それにしても、12歳のテロリストは余りにも若い。テロリストというイメージと合致しない。イスラム過激派思想、サラフィスト、「神の国」(シャリア)建設といったイスラム系テロリストの常套句が12歳の年齢とは一致しにくいのだ。
インターネット時代で生まれた子供たちは早い段階でITに接し、複雑な器材をこなすようになっていく。だから、彼らは子供部屋でイスラム過激派のサイトを開け、その影響を受けることは十分考えられる。学校の教室ではないから、教師はいない。親も関与できない空間、子供部屋でイスラム系テロの講義を受けることができるわけだ。
息子や娘がイスラム過激派に走った家族関係者は、「息子、娘がいつイスラム過激派の影響を受けたのか分からない」と嘆く声をよく聞く。
治安当局は、イスラム系青年たちの過激化防止のため文部省、社会省と連携を深める一方、過激化問題の相談所を設置し、過激な道に行こうとする子供を抱える家族関係者の相談に応じている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。