ども宇佐美です。
先日に続き少しだけ豊洲の話です。
先日のブログで「豊洲市場の安全は既に証明されている」ということを書いたわけですが、これに対する反論として多数の方から「豊洲市場は”安全”かもしれないけど、”安心”じゃないからダメだ」という指摘を受けました。おそらくこうした主張は小池知事や音喜多都議の影響を受けたものと思われますが、私はこのような主張が一番危険だと考えています。なぜなら
「安全だけど安心じゃないからダメ」
という理屈はレッテル貼り、風評そのものだからです。「安全じゃないからダメ」と言われれば業者は対策の取りようがあります。しかし「安心」という尺度は測ることができないもので根拠も薄弱なため、このように言われても対策の取りようがありません。単なる思考停止のレッテル貼りです。大事なことは「安心じゃないからダメ」というのではなく、
です。こういうと「豊洲の地下水は実際に環境基準に違反しているではないか!さらなる対策必要だ!」という声をあげる人がいらっしゃると思いますが、それは先日のブログで説明した通り「食の安全」とは無関係です。一例をあげましょう。少し見辛いキャプチャで恐縮ですが、以下の表は東京都の地下水モニタリングを一部抜粋したものです。
この中で編みかけの部分が環境基準を超えた部分になりますが、このように中央区の東日本橋、豊島区の池袋、大田区の南六郷(蒲田近辺です)といった都心部では水質汚染が見られることがわかります。でもだからといって私たちは、これらの地域を避けることなく、池袋や東日本橋や蒲田でグルメを楽しんでいますよね?
それはこれらの街の飲食店では地下水が用いられているわけではないので、水質汚染が食の安全に一切関係ないからです。豊洲においても同じことで、地下水は全く利用しないのですから、「食の安全」のためにこれ以上の対策を取る必要は全くありません。
更に言えばそもそも地下水のモニタリングは「食の安全」のために行われているものではありません。
では「なぜ東京都は食の安全に関係のない地下水のモニタリングをしているのか?」と言いますと、それは全く別の文脈です。この点については、2014年11月18日の都議会経済・港湾委員会で担当者である若林基盤整備担当部長が以下のように説明しています。
◯若林基盤整備担当部長
都では、豊洲新市場用地の安全・安心を確保するための対策の策定、対策実現のための具体的な技術、工法について検討する目的から、学識経験者による専門家会議及び技術会議といった二つの会議体を設置し、これまで、その会議体の提言に基づく対策を実施してまいりました。
具体的には、街区周縁部に遮水壁を設置し、周辺地域との地下水の移動を遮断した後、ガス工場操業地盤面から深さ約二メートルの、APプラス二メートルまでの土壌について、汚染の有無にかかわらず、全てきれいな土に入れかえる。
また、APプラス二メートルより下については、操業由来の汚染土壌を全て掘削除去し、地下水についても環境基準以下に浄化するもので、操業に由来する汚染物質は、確実に除去できたと考えております。
なお、土壌汚染対策法では、自然由来の物質が存在する場合、形質変更時要届け出区域が残ることとされており、豊洲新市場用地においても同様であります。
したがいまして、豊洲新市場用地における二年間モニタリングは、形質変更時要届け出区域台帳から操業由来の汚染物質を削除するといった、記載事項を変更するための手続に必要な措置として実施するものと認識しております。
つまり「食の安全に関係ない」からといって地下水の汚染を放置しておいて良いのかというと、そうではなく、汚染を見つけてしまった以上きちんと監視を続け、適切な対策を取りつづけることが都の責務なので続けているのです。
よく「東京都は豊洲市場の開設前に地下水を環境基準以下にすると都民に約束した」という主張をする人がいますが。これは間違いで「東京都は豊洲市場の開設前・開設後を通して地下水を適切に監視して対策を取る」ということを都民と約束したのです。この点を小池知事本人が捻じ曲げて伝えているのは大変残念なことです。
このように豊洲市場に関しては、現在でも食の安全は確保されており、東京都はきちんと我々との約束を守ってくれています。「東京都の役人は我々を騙している」「都民は安心していないから安全でも豊洲移転はダメだ」と投げ捨てるのではなく、こうした事実をきちんと伝えて「安全」を「安心」に近づけることが今都政に、また都政を見守る都民やメディアに求められることではないでしょうか?
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年1月25日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は東京都サイトより)。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。