BP長期予測2017版を発表

このブログで何度か、BPやエクソンはいつ石油需要のピークが来ると見ているのか、2017年早々に発表される両社の次の長期予測が気になるな、と書いてきた。

シェルのCFOは第3四半期の決算発表のさいに「10~15年後に来る可能性がある」と発言し、OPECは年次長期予測の中で、シナリオの一つとして「15年以内にピークを迎える可能性」に言及していた。ちなみにIEAの長期予測では「需要ピークは見えていない」となっている。

昨日、BPが “Energy Outlook 2017” と題して年次長期予測を発表した。

日経ロンドンの黄田和宏特派員は「2050年まで原油余剰継続も 英BP、エネルギー見通し発表」(2017年1月26日2:45)と題して報じている。だが、「需要ピーク」については触れられていない。文字数制限があるのだろうか。

FTをチェックしたら ”BP warns of price pressure from long term oil glut” と題して、ほぼ同じ時刻(2017年1月26日1:30ごろ、東京時間)に報じていた。この記事は「BPの予測では、石油需要は2040年台半ばにピークを迎えるかもしれないとなっているが、デール氏は、もし代替技術が予測より早く実現すれば、これより早くなるかもしれないことを認めている」という文章で終わっている。

長期予測全文は未読だが、両記事から読み取れるのは、生産コストの安い国・会社が勝ち残るだろう、ということだ。筆者には、民間企業である大手国際石油会社は、数あるオプションの中からもっとも利益が見込めるところへ投資先を変更していくことができるが、柔軟性にかける産油国およびその国営石油は大変だろうな、という一文が心に残った。

はてさて読者の皆さんはどう感じられるだろうか。
例によってFTの記事を、筆者の興味関心にしたがい次のとおり紹介しておこう。

・BPの分析によると、世界は、化石燃料の需要が減少し始める前に生産者が競って生産するので、長期的な供給過剰に直面している。つまり石油会社は、長いあいだ低価格の圧力に備えなければならないことを意味している。

・英BPによると、これから50年以内に必要とする量の2倍もの技術的に回収可能な石油が存在しており、生産されないものが出てくる。

・需要は石油から徐々にクリーンなエネルギーに移っていくので、「取り残された(stranded)」資産にならないよう、生産者(国および会社)間の競争が激化していくだろう。

・BPのチーフ・エコノミストであるスペンサー・デールは「きわめて重大な圧力が長期間価格を押さえつけることになろう」と語り、OPECおよび非OPECによる協調減産により50ドル以上に持ち直してきた市場に水を差している。デールは価格水準については発言しなかった。

・だが、彼の予測は、産油国が長期間規律を維持しうるかどうかに疑念を呈するもので、少なくもと2014年以前の100ドルへの回帰はありそうもないことを示している。デールは「自分が所有者だったら、自分の資産が取り残されたものとならないように動くだろう」という。

・価格への圧力は供給サイドから来るだろう。米シェールの成長は強く、電気自動車
を含め、再生エネルギーへの需要増が見込まれているからだ。

・デールは、高コストの生産国は、米国、ロシアおよび中東の低コスト生産国との激しい戦いに直面するだろう、という。BPのような大手国際石油会社は、もっとも魅力のある資源を求めて資本(capital)を移動する能力を持っているが、産油国や国営石油は柔軟性に欠けている。

・BPは、現在の技術で回収可能な石油が2.6兆バレルあり、これはほとんどのシナリオで2050年までの需要量の約2倍に相当する、と見ている。

・これから何十年も化石燃料がエネルギーの支配的位置を占めるが、2035年時点で75%となり、2015年版予測時の86%から大幅に減少することになる。2035年までに約30%増加するエネルギー総需要の、約半分を非化石燃料が占めるだろう。BPの社長ボブ・ダドレーは「世界のエネルギー事情は変化しつつある」「我々は適応していかなければならない」という。

・増加率は、石油は0.7%p.a.だが、再生エネルギーは3.7%p.a.と見込まれている。

・デールによれば、中国における石炭から風力、太陽光への移行が予測以上に早かったことが主因だ。

・BPはまた、現在100万台の電気自動車が、2035年には、昨年の予測では7,000万台だったが、今年は1億台に増加するだろうとみている。だがこれは、世界全体の自動車台数の5%に過ぎない。デールは、電気自動車はゲームチェンジャーにはならない、「原動力は米国テスラ(電気自動車メーカー)のドライバーではなく、中間層となり初めて自動車を購入するアジアの20億人の人々だ」という。

・BPの予測では、石油需要は2040年台半ばにピークを迎えるかもしれないとなっているが、デール氏は、もし代替技術が予測より早く実現すれば、これより早くなるかもしれないことを認めている。

『BP長期予測2017』そのものを読み終え、興味深い事項があったらまた報告しますね。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年1月26日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。