自衛隊戦闘服で談合。これって官製談合じゃないの?

防衛省Wikipedia1024px-Ministry_of_Defense2

Wikipediaより(編集部)

自衛隊戦闘服で談合、ユニチカに2億円課徴金(読売新聞)

防衛省や防衛装備庁が発注する自衛官用の戦闘服などの入札で談合を繰り返していたと
して、公正取引委員会が、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、大手繊維メーカーのユ
ニチカ(大阪市)に約2億円の課徴金納付を命じる方針を固めたことが分かった。

クラレも関係していましたが課徴金納付命令は免除されました。ですが再発防止を求める排除措置命令は2社に出される方針です。

自衛隊戦闘服で談合 「クラレ&ユニチカ」ボロ儲けのカラクリ(日刊ゲンダイ)

「戦闘服や作業服に使われる『ビニロン』と呼ばれる繊維は耐熱性に優れた特殊素材で、製造する国内メーカーはクラレとユニチカしかない。技術的な問題というよりは、この2社が防衛省にガッチリ食い込んでいるため、同業他社の参入余地がないからです。それで寡占状態が続き、いわば言い値がまかり通ってきた。ただ、クラレとユニチカが相対で談合していたとは考えにくい。縫製はアパレルメーカーに外注することが多く、その間に入る商社が価格調整の役割を担っていたのでしょう」(繊維業界関係者)

これは官製談合が疑われて然るべき話です。
何十年にも渡って、何故2社のみが供給を行ってきており、しかも世界では例のないビニロンが使用され続けてきたのか。
そのビニロンは難燃性以前の問題で、脱色が激しく現場では評判が悪いものです。一部の部隊では色落ちが激しくて、茶色くなるのでマルチカム迷彩と親和性がよくなるので、マルチカムの私物を許す部隊長がいるくらいです。

世界でビニロンの戦闘服を使っている国はぼくの知る限り我が国以外ありません。人民服はビニロン製だったからかつての人民解放軍は使っていたでしょう。それは先の戦争で迷惑欠けたお詫びとしてビニロンのライセンスが無料で中国に供与されていたからです。現在も使っているかどうかは知りませんが。

自衛隊ではビニロンの以外の繊維と他の繊維を比較したことがあるんでしょうかね?

しかも調達価格がかなり高い。別に全部外国でつくれとまではいいませんが、例えば服のデザイン、素材、縫製は別に契約するという手もあるでしょう。

例えば設計ならばミズノやアシックスなどアウトドアブランドに声をかけるのも手でしょう。
諸外国ではアウトドアブランドが軍用の被服やバックパックなど手がけています。例えばパタゴニアですが、同社は日本での「クリーン」なイメージの維持のためか、日本では紹介しておりません。

それから縫製にしても、3つとは4つロットに分けてそれぞれ入札を行えば、経験のある工場が複数維持することができるでしょう。

ブーツも問題です。精々安全靴のメーカーであるミドリ安全が戦闘ブーツを独占しているのは何故なんでしょうか?

要は二社以外の企業が参入できない、有形無形の障害を取り除けば、国内生産でもコストを下げることが可能でしょう。その努力を需品担当部署が何十年もしてこなかったのは何故なのか。

需品は正面装備のように目立たないだけに、胡乱な利権と高コスト調達の宝庫となっています。

自浄能力がないならば、国産を止めて外国で生産をすることも仕方がないでしょう。身から出たサビです。機密を守るためと称して、低性能な被服をバカ高い値段で買うぐらいならば、性能を公開しても数分の一から一桁安いコストで、海外で生産してはどうでしょうか。

(おしらせ)
朝日新聞のWEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。

南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか
戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ

続・南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか
不足するキット、十分な応急処置ができない衛生兵……

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。

自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その1
http://japan-indepth.jp/?p=32558
自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その2
http://japan-indepth.jp/?p=32583


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。