トランプ米大統領は、就任式直後から積極的に米大統領令に署名してきました。オバマ前政権1期目のゼロと、対照的です。
20日
・医療保険制度改革(オバマケア)撤廃をめぐる経済的な負担軽減
・成立過程にある規制の凍結
23日
・環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の離脱
・軍を除く連邦政府機関の雇用停止
・メキシコシティ政策の廃止、人工妊娠中絶を支援する海外の非営利団体などに対する助成金の支出を禁止
24日
・「キーストーンXL」並びに「ダコタ・アクセス」の2件のパイプライン建設を推進
・優先的なインフラ投資計画につき、環境精査の効率化
・米国産の素材などを利用したパイプライン建設の促進
・製造業の活性化を目指す各種承認の簡素化、並びに規制緩和
25日
・メキシコ国境間に壁建設
(27日に電話での首脳会談後に米国=メキシコ共同声明を発表、メキシコ国境間の壁建設費用をめぐり意見対立があったと明記)
・公共安全の拡大、不法移民の取り締まり強化
27日
・入国審査の厳格化、テロ対策強化の一環で特にイスラム教徒が対象
・軍備増強
就任からわずか1週間で少なくとも合計14件(パイプライン2件はそれぞれ1件ずつ署名)の米大統領令にサインするという早業に、世界中で波紋を呼ぶ事態となっているのはご案内の通り。TPPでは日本をはじめ米国を除く11もの加盟国が仕切り直しを余儀なくされ、メキシコの壁建設では異例の米墨首脳会談中止に至りました。
TPP支持派のペンス米副大統領、離脱の米大統領令に何を思ったのでしょうか。
27日の入国審査の厳格化をめぐっては早速、ビザ取得済みのイラク人2名がNYの玄関口JFK空港で拘束され、米大統領と米政府を提訴しました。物議を醸す米大統領令の最初の法的チャレンジとなります。
米大統領令に署名した数で過去最高の記録を樹立したのは、第32代ルーズベルト米大統領で3,522件に及び、1年で290.8件という計算になります。世界恐慌後の米国再建や第2次世界大戦の舵取りを迫られた非常時の米大統領とあって、他の追随を許さぬ数に及ぶのは致し方ないでしょう。さすがのトランプ米大統領でも、このままのペースで署名していったとして年間182.5件にとどまる見通し。とはいえ問題は数ではなくその内容で、同盟国であろうとなかろうと世界を震撼させるに違いありません。
(カバー写真:Nicholas Lin/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年1月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。