1月29日に投開票が行われた佐賀県唐津市の市会議員選挙はメディアの注目を浴びた。同姓同名の候補者がいたのが原因である。本名「青木茂」、56歳現職は選挙管理委員会に「青木しげる」と届け出、43歳新人は「あおきしげる」とした。今回の選挙では、唐津市選挙執行規程に沿って、衆議院小選挙区選挙で使われるのと同じ様式の記名式投票用紙が使用された。そこで、現職は「(現)青木しげる」か「青木しげる(56才)」と投票用紙に記入するように求めていた。
現職が2947票、新人は1522票で、結果は二人とも当選。しかし、2人の名前を書いた投票用紙に年齢や現新の別が明記されておらず、案分となるものが約800票も出たそうだ。たとえば、「青木茂」とだけ書いた投票はどちらへの投票かわからないから、はっきりわかった票の割合で配分するが、これを案分という。
衆議院小選挙区選挙などでは記名式用紙の使用が公職選挙法によって定められているが、地方の長と議員の選挙では別の様式も利用できる。最高裁判所裁判官の国民審査用紙のように、列挙された候補者の中から一名に○印を記載する記号式投票が公職選挙法第四十六条の二に定められている。唐津市でも記号式投票が実施されていれば「青木茂」に関する疑問は生じなかったが、選挙執行規程にはその準備がなかった。
投票所に設置された電子投票機を用いる方法も取り得た。これは、2001年に成立した「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」に基づく投票形式である。電子投票機の選択画面に候補者名に加えて年齢なども表示されていれば、「青木しげる」氏と「あおきしげる」氏を有権者が区別できた。電子投票であれば二名以上には○を付けられないので、記号式に比べて無効投票はさらに減る。この電子投票は2000年代初めにいくつかの自治体で試みられたが、システム障害が生じたこともありその後は実施されていない。自宅で投票できるネット投票も併用して、選択画面に顔写真も添えていたら、さらに改善できた可能性があった。
わが国では記名式投票が原則となっており、唐津市選挙執行規程もそれに沿ったものだ。そろそろ、この原則を見直すべきではないか。一気にネット投票は無理でも、せめて電子投票を導入してはどうか。同姓同名の立候補は今後も起きるのだから。