ふるさと納税の返礼品のいちごが少しだけ「苦かった」理由

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年末に申し込んだ、ふるさと納税の返礼品が次々に送られてきています。いくらやうなぎといった魚介類だけではなく、あまおうのような果物も届けられました(写真)。

あまおうは、普段自分で買っているものより大粒で、とても美味しかったです。しかし、もらっておいて言うのも何ですが、甘みを味わいながら、罪悪感から何とも苦い味わいを感じたのも事実です。その理由はふるさと納税の仕組みにあります。

ふるさと納税は、納税と呼ばれていますが、税金ではなく実は寄付金です。自分が選んだ自治体に寄付をすると、それと同じ金額を自分が納める税金から控除することができる仕組みです。2000円を超える控除上限額までが控除されますから、2000円の負担で、税金を減らし、その分寄付をすることができるのです。

ふるさと納税がブームになっている一番の要因は返礼品です。寄付のお礼として自治体から食べ物などの商品が送られてくるのです。

2000円の自己負担で、寄付をして全国からの様々な返礼品が受け取れるのは、お得で楽しい制度のように思えますが、別の見方をすることもできます。

寄付を受け取った自治体は、寄付金は財政にプラスとなりますが、返礼品のコストを負担しなければなりません。例えば、1万円の寄付で、あまおうを返礼品に贈るとすると、商品価格はおそらく2,000円から3,000円位。それに配送コストや、事務コストを含めると、総コストは4,000円から5,000円かかっていてもおかしくないかと思います。受け取った寄付金に対する返礼品のコストを返礼比率と言いますが、これが90%になるような例もあると聞きます。

このような返礼品目当てのふるさと納税が過熱すると、日本の自治体全体で見れば、税収が減って、それとほぼ同額の寄付金が増えるものの、その過程でかかるコストが、税の無駄遣いになっている可能性があります。

また、このふるさと納税は、税収の多い人ほど控除額も大きくなりますから、たくさん寄付することができます。たくさんの返礼品をもらっている高額納税者の人もいると思われます。税金には所得の再分配という機能がありますが、ふるさと納税はその機能に逆行する仕組みになっているのです。

ふるさと納税の本来の目的は、返礼品ではなく別のところにあったはずです。

例えば、災害などの被害にあった自治体に対する寄付や、自分がお世話になった自治体に対する寄付は、本当にサポートしたい自治体への寄付として意味があると思います。

確かに、自分が好きな食べ物を返礼品に選んで、寄付をするのは楽しいことです。しかし、返礼品目当てのふるさと納税が広がれば広がるほど、税の不平等とコストが大きくなり、財政の大きな問題になる可能性があります。ふるさと納税で寄付する人だけが歪みを利用して「やったもん勝ち」になり、やらない人が損をする状態は好ましいとは言えません。どこかで、歯止めをかける必要があると思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年1月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。