宴会芸と日本人 自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ

常見 陽平

常見

週末、久々に結婚式の2次会に参加する。大学の後輩のだ。しかも、結婚がメディアで報道されているという(TBS関係者同士、な なんとなく誰かわかるかな)。めでたいことだ。

その久々に参加する結婚式2次会で宴会芸をすることになった。こういうのは嫌じゃない。むしろ大好きだ。待ってましたという感じだ。いや、スピーチをしたことは何度もあるが、宴会芸は実に10年以上ぶりくらいではないだろうか。リクルートからバンダイに移ったあとは人事だったので、宴会芸は少なめで。その後もベンチャー、フリーランス、大学の先生と宴会芸と縁のない人生を送ってきた。

久々に宴会芸をするので血湧き肉躍るという感じだ。

宴会芸の強要は、立派な労働問題だ。しかも、コンプライアンスに違反するような芸をすると社内外で問題になったりする。

私も社会人になった頃は宴会芸は苦手な方だった。なんでこんなことをするのだろう、と。しかし、リクルートの創業者江副浩正の言葉「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」ではないが、社会人3年目くらいから嫌ではなくなり、むしろ自分から買って出るようになっていた。

ふと気づいた。以前は、自ら宴会芸を買って出るほどポジティブな人間だったのに。十数年間、つまらない人生を送っていたということか。いつの間にか、つまらない大人になっていたということだ。猛反省した。

宴会芸は、心技体すべてが試される。良識もだ。ちゃんと主賓も参加者も満足させつつ、さらにやっている本人たちも楽しみ。もちろん、コンプライアンスには違反せず。そんなものを考え尽くすのは面白いものだ。頭を常に全回転させ、八方に気を配って、一分の隙なく、やりきる。この宴会芸というものを通じて、多くを学んできたように思う。宴会芸は深いのだ。逆に言うと、この10数年、勉強をサボってきた自分を猛反省した。「やってみなはれ」精神を忘れていた、と。

誤解なきように言うと、宴会芸を強要するのは問題だし、コンプライアンス違反は最悪だ。いや、コンプライアンスにうるさい時代だから従わないといけないのではなく、主賓や参加者、芸を一緒にやる仲間を傷つけないためにも、宴会芸とコンプライアンスは大事なのだ。

宴会芸は自ら創るべきで、やらされるものではない。宴会芸とは、先手先手と働き掛けて行くことで、受け身でやるものではない。大きな宴会芸にチャレンジする。小さな宴会芸は自分も、会場の笑いも小さくしてしまう。難しい宴会芸を狙うことにより、進歩がある。

数日後に迫ってきた。中川淳一郎や某週刊誌の名物編集者も一緒にやる。悔いを残さないためにも、錆びつくよりも燃え尽きるつもりで、全身全霊をかけてやりきるつもりだ。TBS関係者から笑いをとるという、普段呼んで頂いている番組でもなかなかやりきれていない難易度の高い目標に、私はチャレンジするつもりだ。

・・・宴会芸をめぐる事情も変わっているようで。少し前のメルマガの人生相談コーナーを転載しよう。

宴会芸は、いいぞ(『北斗の拳』のアミバ様風に読むこと)。

名称未設定

Q.宴会で幹事をするのですが・・・

常見先生、こんにちは。私は、人材ビジネス会社の1年目です。常見先生のご
著書やエントリーはいつも参考にさせて頂いております。

先生はサラリーマン時代、たくさんの宴会芸をされてきたとのこと。忘年会シーズンが迫ってきて、新人たちで宴会の幹事をすることになりました。

最強の宴会芸について教えてください。

常見先生がやったもの、見たもの、なんでもいいです。

ぜひ、アドバイスをください。

よろしくお願いします!

(スランプ大統領 20代 男性 千葉県在住)

A.すべての宴会芸は時代の影響を受ける

おい、お前!トランプが勝ったからってなんだ、その安易なリングネームは。
しかも、新人らしい、アバウトすぎる無邪気な丸投げ質問だな。

毎年、この時期になるとクリスマス、忘年会や宴会芸の質問がくるよね。

そういえば、ちょうど先日、ある週刊誌から、「各社に伝わる伝説の宴会芸」っていう特集の取材を受けたよ。

その時、思い出したのだが・・・。

10数年前のリクルート名古屋支社には、「そうじゃ隊」という伝統芸があった。

ブリーフ一丁の細マッチョ、ガリガリ、デブとバランスよく揃った男3人組による芸だ。送別会なり、結婚式なりで、主賓を椅子に座らせ、ブリーフ男たちが取り囲む。リーダー的な男が、相手をdisる発言をし、それに対して周りの2人が「そうじゃ、そうじゃ」と連呼する。その声は徐々に会場を巻き込んでいくのだ。

こんな感じだ。

ブリーフ隊A:おい、常見!お前、「意識高い系」とかいう言葉を広めつつ、お前自身が意識高すぎなんじゃ。

ブリーフ隊B、C:そうじゃ、そうじゃ!

ブリーフ隊A:「今日は◯◯さんと対談した。何かが生まれそう」っていうツイート、意識高い系、そのものなんじゃ!

ブリーフ隊B、C:そうじゃ、そうじゃ!

ブリーフ隊A:意識高い系とか言うけどな、お前のInstagram、食べたスイーツだらけで、自意識高い系なんじゃ!

ブリーフ隊B、C:そうじゃ、そうじゃ!

こんな感じで、暴露話や下ネタなんかも交えつつ、進んでいくのだ。

あと、「納車説明」っていう芸もあって。これは披露宴で行うやつだ。「この度は、○○をお買い上げ頂き、ありがとうございます」「いい年齢なので、夜の営みの最中にガス欠なんてこともあります」「突然、吉原や歌舞伎町に猛ダッシュすることもあります」みたいに、クルマに例えて、下ネタも交えつつ、新郎を紹介する、という。

もっとも、たぶん、この芸、今は行われていないと思う。ブリーフ男が3人出て来るだけで、コンプライアンス的にはダメだろ。よく宴会芸が強要される問題が話題となるが、とはいえ、だいぶマイルドになってきているのではないかなとも思う。このあたり、社風の違いもあるし。部署によっても違う。盛り上げようと思い、力むと滑ってしまう。なので、空気読みつつ考えよう。

今年は、ピコ太郎のPPAPとか、逃げ恥ダンスなんかがくるんだろうなあ。

私が今、サラリーマンだったらブラックユーモアで「もし、トランプが、我が社の社長になったら」みたいなことをやるだろうなあ。トランプのコスプレで。「◯◯とは取引停止だ」とか「競合、全部つぶす」とか、無茶苦茶なことを言いまくる、という。

個人的に、思い出に残る宴会芸はリクルートの同期の結婚式2次会でやった「マトリクス」という宴会芸だなあ。キアヌ・リーブスが新郎新婦のために来日したという設定なのだが、むちゃくちゃな英語のスピーチに合わせて、通訳する、と。

“He likes fashion health very much.”を「彼のファッションセンス、最高だよ」とか
“He likes akachan-play very much.”を「君たちの赤ちゃんを早くみたいよ」って訳したりね。

その後、悪い奴らが出てきて、バッサバッサとなぎ倒す、と。

主賓が、今、リクルートの社長の峰岸真澄さんで。彼が役員なりたてくらいのころで。「この会場はゼクシイの大事なお客さんなので、宴会芸などで失礼のないように」みたいなスピーチをしたのだけど、実はその前に、芸のリハーサルで、グラスの山に体当たりして、30個くらい割った後だったのだよね・・・。出禁になった説もあったけど、どうなんだろう。

12月の週末に、久々にパーティーを主催するので(U-35の人事&人材ビジネス関係者の飲み、興味ある?)、その時には、何かやっちゃおうかなあ・・・。

というわけで、宴会芸は深いですなあ。

もろもろリスクを考えつつも、楽しくいきましょう。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年2月2日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた常見氏に心より感謝申し上げます。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。