米国教育長官の任命と「教育の無償化」

トランプ大統領が教育長官に指名したベッツィ・デボス氏を、米国議会上院が2月7日に承認した。投票は50票ずつの可否同数だったが、上院議長を兼ねるペンス副大統領が賛成して就任が認められた。

公的資金を投入して私立校を運営する「チャータースクール」という仕組みの拡大に、デボス氏は取り組んできた。デボス氏は教育バウチャーの熱心な推進論者である。教育は州政府に委ねられているが、障害児教育は連邦政府の責任であるという例外をデボス氏が知らないことが公聴会で露わになった。これらが重なり、一部の共和党議員と、公立学校の教員組合を支持基盤に持つ民主党が就任に反対した。

チャータースクールには、私立の質の高い教育を安く受けられる、教員が新しい教育方法に挑戦するので児童は新しい教育方法で学習できるといった支持意見がある。一方で、出来の悪い児童が排除される、資金が不足する公立学校から金を吸い上げて選別された児童に回すのは不公平といった反対意見がある。Debate.orgに寄せられた賛否は57対43で拮抗している。

教育バウチャーは、バウチャーを与えられた保護者がそれを学校に渡すと、数に応じて州政府から補助金が支払われる仕組みである。橋下氏が大阪市長当時、学校外教育の助成にバウチャーを導入し、情報通信政策フォーラム(ICPF)でも取り上げたことがある。対象となった中学生が塾に行くと大阪市が塾を補助する。保護者に現金を渡すのと違って、これなら塾代として確実に利用される。生徒や保護者が塾を選択するので、市場競争で良質なサービスが提供されるようになる。

東京都は私立高無償化を打ち出し、国会では大学教育の無償化が議論されている。東京都の施策について日本経済新聞は次のように報じている

一方、都立高からは反発の声が聞かれた。「施設面で充実し、教育の自由度の高い私立とフェアな競争ができるのか。大きな脅威になる」。ある難関校の校長は身構える。

これは、デボス氏が進めてきたチャータースクールへの反対論と同様である。国会では各党が教育の無償化を競い合っているそうだが、おかしな話である。本当は賛否が分かれる、しっかりと検討しなければならない課題である。