「アラビアのケン」サウジアラムコIPOのリード・アドバイザ

FTが興味深い記事を掲載している。サウジアラムコIPOのリード・アドバイザーが決まった、というニュースだ(”’Ken of Arabia’ secures lead advisor role on Saudi Aramco IPO” around 5:00am on Feb 9, 2017 Tokyo time)。

このニュースはIPO上場を希望している東商取にとって嬉しいものなのかどうか、金融に疎い筆者には判然としないが、リード・アドバイザーに選ばれたのが、ムハンマド副皇太子がメンターと仰いでいると伝えられるシェイク・ムハンマド・ビン・ザイード王子がいるドバイで強いブテイック型投資銀行、というのは何か意味があるのだろうか?

記事の要点を、筆者の理解が及ぶ範囲で次のとおり紹介しておこう。

・Ken Moelisは、カジノ王Steve WynnのLas Vegas Strip再生を支援したことに特筆されるように、ニューヨーク・バブルの外で大きな仕事を勝ち取ることで30年間のキャリアを積み重ねてきた。だが、サウジアラムコIPOのリード・アドバイザーを獲得したことにより、ウオール街における彼の地位は新たな高みに引き上げられることになる。

・ライバルであるニューヨークの投資銀行幹部曰く、「もし彼がこの仕事をうまくやり遂げたら、『アラビアのケン』と呼ばれることになろう」「いつも交渉しているCEOたちとは異なる顧客と取引することは容易ではないが、Kenはエキセントリックな大君たちとの取引になれているからな」。

・投資銀行としては比較的歴史の浅いMoeli &Co.は、この数ヶ月間、サウジアラムコ本社のあるダハランに招かれていた銀行の中で、世界最大のIPOのリード・アドバイザー業務獲得競争の先頭を走っているとは見られていなかった。状況に詳しい二人の人によると、EvercoreとRothschildが有力候補だった。然しMoelisは、同社が複雑な上場業務を操縦する能力を持っているとサウジアラムコの幹部たちに確信させ、勝利を得たのだ。

・本件に近いライバル銀行家曰く、「彼ら(Moelis)が石油ガス会社民営化の何を知っているのだろうか・・・。Ken Moelisはビジネスの素晴らしいピッチャー(a fantastic pitcher for business)だ」「おそらく彼より素晴らしい人はどこにもいないだろう。だが彼の会社の株式部門には、過去にこういった仕事をなしとげた人間はいない」。

・リード・アドバイザーとしてMoelisは、引受会社や上場取引所の選定を手助けするなど他の準備作業を監督することになる。株式はリヤドの取引所Tadawulで上場する他、ニューヨーク、ロンドン、香港、東京を含む海外で複数上場することを検討している。

・ニューヨークでの上場は、米国が9/11テロの被害者家族がサウジ政府を提訴できるとする法案を可決したため議論を呼ぶところだ。だがニューヨークに本拠を置くMoelisをリード・アドバイザーとして選ばれことは、可能性が再び高まっているということかも知れない。

・複数の関係者によれば、これまで何年もサウジアラムコの取引銀行であるJP Morganは、主要引受会社として中心的な役割を果たすものとみられている。またJP MorganとCITIの前スター・バンカーであるMichael Kleinは、IPOに関連した広範な事項を高官たちと共に推進してきており、引き続きその役割を果たすものとみられている。

・サウジアラムコ、Moelis、JP Morganはコメント避けた。Evewrcoreからは反応がなかった。

・関係筋によれば、ムハンマド副皇太子は2018年のなるべく早い時期の上場を目指しており、関係者に手続きを早めるよう要請している。

・2007年に設立したばかりのMoelisの会社がサウジアラムコIPOの仕事を勝ち得たことは、従来型のパートナーシップ・ビジネス・モデルという取引手法に注力するという同社の戦略の正しさを立証するものだ。他のブテイック型投資銀行がほとんど存在しない地域に、経験豊富なバンカーを配し、グローバルネットワークを展開することによりMoelisは、M&A、事業再生およびIPOに特化してビジネスを急速に拡大するという強みを発揮している。

・中東においてMoelisは、Dubai WorldやUAEで影響力のあるPEファンドのAbraajなとの大会社と緊密に仕事をする大きなチームを形成してきた。このチームは、Moelisが最近、大型雇用した(several big hires)ロンドン、ニューヨークおよびヒューストンのチームと連携しながら業務を遂行している。

・2014年にMoelisは、米国下院与党のリーダーだったEric Canorを雇い入れた。ウオール街の多くの人はこれを、ワシントンおよび海外での影響力を強めるものだと見ている。ウオール街で、トランプが大統領に選ばれる可能性をいち早く指摘した一人である共和党員MoelisがMr Cantorを雇用したことは、複雑な世界情勢の中で事業をうまく操縦できるよう顧客を支援する能力を拡大するものだ、と言っていた。

ふむふむ。
このニュース、兜町ではどう評価されているのだろうか?


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年2月9日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。