昨日のTBSの報道特集で肝の部分はあらかた出ていたように思う。
衆参両院で3分の2以上の圧倒的な議席を確保しているのだから何が何でもこの通常国会で共謀罪関連法案を通そうとすれば通るのだろうが、自民党の執行部も国対もそんな無茶なことは考えていないと思う。
従前の共謀罪をテロ等準備罪に名称を変え、単なる共謀の事実だけでは強制捜査の対象には出来ず、強制捜査をするためには共謀者の間で現実に準備行為を行うことが必要だとすることや、適用対象団体は組織犯罪集団であって、一般の市民団体や一般の市民は適用の対象にはならない、というコンセプトはそれなりに評価すべきだと思うが、しかしそれではそれで足りるか、ということについては慎重に検討する必要がある。
野党の方々の問題意識が少しずつ高まってきているのはいいことだと思うが、一番大事なのはやはり自民党の国会議員の認識である。うっかりすると自民党はこの法案については政府の検討に任せておけばいい、とか、誰か専門家に任せておけばいい、と思ってしまって法案の具体的な中身についての検討が疎かになってしまうことがある。
問題があるのに問題の所在が分からないとか、欠陥があるのに欠陥に気が付かないまま法案を通してしまうことがあるから、よくよく注意しておいた方がいい。
どんな法案でも数の力で通してしまえるのだから、今の自民党は強力な権限を持っていると言っていいだろう。
大きな権限を持っている者にはそれだけの責任が伴う、ということをよく知っておいて欲しい。
問題の所在を指摘するのは野党の国会議員や日弁連や学者の方々だけで、肝腎の自民党の中からは何の声も上がらない、というのは実に寂しいことであり、同時に危険なことである。
自民党の国会議員が共謀罪関連法案について何も言わないということになると、結局は法務省の官僚が起案した法案がそのまま政府案として国会に提出されることになってしまう。そういうこと委になってしまうと、自民党の国会議員は実質的には法案を作成する立法者ではなく、法務省の官僚が策定した法案に賛成の挙手をするだけのロボットになってしまう。
本当の立法者は国会議員ではなく、行政府の官僚の方だ、などという本末転倒の状態に陥ってはならない。
そろそろ自民党の法務部会でも共謀罪関連法案についての勉強会を開催すべき時だろう。
この法案のどこにどんな問題があるか、問題があるとすれば、どこをどうすればいいか、などについてしっかり検討を進めた方がいい。
私の見るところ、今の自民党にはそういう役割を担えるような人材が乏しい。
ちょっと困ったな、というところである。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。