次世代テレビは韓国の勝ちだ --- 山田 高明

(引用:LGエレクトロニクス・ジャパン公式サイト)

先日、家電量販店でLG社製の「55型4K有機ELテレビ」を試聴したが、同型の液晶製品が並んでいる中では異彩を放っていた。

おそらく、これまで市販されたすべての家庭用テレビの中で、史上最高と評してもいいほどの画質だと思われる。しかも、単に高画質だけではなく、(今さら感のある指摘だろうが)本体の薄いことにも驚嘆した。ほとんど一枚のパネルに近い。液晶テレビは一定の厚みがあるため、結局「壁掛け」とはいかなかったが、有機ELテレビは近い将来、ボルトで壁に固定する必要のない、本物の「壁掛けテレビ」へと進化するかもしれない。

この品質に加えて、「5年間保障」のケアと「同型の液晶4Kとほとんど違わない価格」ときている。これでもう「テレビは韓国の勝ちだ」と、直感した。

たしかに、同じだけのクオリティは、東芝「レグザ」の大型有機ELテレビも到達している。しかし、価格的にはまったく太刀打ちできない。製品価格はくるくると変わるので具体的な金額は載せないが、性能が同じなら、安いほうがいいに決まっている。

自明のことで恐縮だが、「価格はいくら高くても構わないから最高の性能のモノを」という消費者と、「性能は低くても構わないからとにかく一番価格の安いモノを」という消費者が両サイドにいて、その中間がボリュームゾーンである。当たり前だが、ユーザーの大半は「性能」と「価格」とのバランスで判断するし、私もそうである。

で、その「普通の消費者の視点」で見た場合、もはや同型の液晶テレビを買うくらいなら、LG社製の「4K有機ELテレビ」のほうでも割に合うと判断せざるをえない。つまり、大型の有機ELテレビの市販品として、はじめて「分岐点」に乗った商品がいよいよ市場に出て来たということだ。よって今後の液晶テレビの「買い替え需要」にも十分応じられる。である以上、今後、テレビは着実に有機ELが主流化していくと思われる。

しかも、有機ELの技術はディスプレイの可能性を大きく広げると言われている。試作品レベルでは以前から登場しているが、曲面にしてポスター感覚で使用したり、フィルム状にして巻き取ったりすることも可能だ。私も「スクロールホン」なるものを絵――*デザインがダサいので注意――に起したことがある。つまり、従来型のテレビでは不可能だったことも可能になり、あらゆる場所にディスプレイを普及させる起爆剤になる。

いずれにしても、かつて液晶テレビがブラウン管テレビに取って代わった道筋を、今度は有機ELテレビが辿っていくと思われる。そういう意味で「次の30年」を制する技術と言える。その競争において、一歩先んじたのがLGのようだ。韓国の家電メーカーといえばサムソンばかりが注目されてきたので、このダークホース的展開は面白い。

おそらくLGには、有機ELテレビに“社運を賭けた”経営者がいたのだろう。対して、先日、シャープが液晶テレビの工場をアメリカに新設するというニュースが入ってきた。どちらの決断が戦略的に正しいかは数年後にははっきりしている。私はもちろん「次の30年」を見据えたLGのほうが戦略眼を持っていると確信する。だから「韓国の勝ちだ」という表現はやや大袈裟だとしても、次世代テレビ競争において「韓国が一歩先んじている」くらいのことは言えるのではないかと思う。むろん、ソニーなどの日本勢も有機ELテレビで追撃しているが、今のところ価格競争で負けすぎの感が否めない。

そして戦略的な決断の正しさは、これからの大きな先行者利益へと結びつく可能性が高い。私としてはそれが日本にもたらされて欲しかったが、正々堂々と勝つ分には、韓国に賞賛を惜しまない。おそらく、有機ELは今後、韓国経済にとって貴重な「飯のタネ」となると思う。どうせなら、これから韓国メーカー、否、韓国という国家は、中途半端ではなく、「有機ELといえば韓国」というくらい、徹底的に「有機EL立国」を目指したらどうだろうか。その思い切った「選択と集中」の決断は、きっと「ハイテク国家韓国」のイメージをさらにアップさせ、韓国を真の経済大国へと押し上げるに違いない。

(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「新世界より」運営)