独連銀がパリとNYから金を本国送還、マルク復活の下準備か?

金と言えば安全資産と知られ、1971年にニクソン・ショックによってブレトン・ウッズ体制が崩壊するまでドルの信認を裏付けるものとして機能していました。

その類まれなる金を、独連銀がかき集めていると聞けば穏やかではありませんよね?

独連銀は9日、同日までにNY連銀やフランス中銀に預けていた金のうち366.3トンを本国送還したと発表しました。2013年に年内に保有する金の半分をフランクフルトへ移すと表明した計画の一環で、これでフランクフルトで保管する金は1,402トン、総保有量3,381トンの41.5%に相当します。本国送還は、事前に計画していた2020年より前倒ししました。残りの半分はNY連銀をはじめ仏中銀、イングランド銀行に分散保有する方針ですが、独連銀の金保有量がNY連銀を上回ったのは戦後初めて。第2次大戦中にソビエトの手を逃れるため分散保有された歴史に、幕を下ろしつつあります。

金は永遠の輝き。


(出所:Bullion Vault/Flickr)

独連銀のカール・ルートヴィヒ・ティーレ理事は、9日の記者会見で「金融政策からマクロ経済に関しトランプ政権が与える影響を活発に議論してきたが、米国の中央銀行を信認する」と発言しました。また「トランプ米大統領の存在が本国送還の引き金となったわけではない」と強調、追加の本国送還はないと説明。しかし、陰謀論好きな市場関係者は「ドイツ・マルクを復活させるための下準備では」と推理しています。

2016年には、英国が欧州連合(EU)離脱を決定したほかトランプ氏が米大統領選で勝利しました。4~5月に大統領選挙が控えるフランスではフランの復活を唱える極右の国民戦線(FN)党首、マリーヌ・ルペン氏が決選投票では敗北する公算ながら優勢な状況です。欧州中央銀行(ECB))のドラギ総裁が「ユーロは不可逆」とのメッセージを繰り返すものの、反移民派の台頭がユーロの根底を覆す懸念は拭いきれず。2016年は「まさか」が連続する年でしたが、2017年も安穏としていられません。

(カバー写真:Mattias Pettersson/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年2月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。