書評「小学校にプログラミングがやってきた ! 超入門編」

山田 肇

文部科学省は2月14日に学習指導要領の改定案を公表し、これからパブリック・コメントが実施される。新指導要領では、グローバル化に対応して小学3年生から「外国語活動」を行うことになった。これに加えて、情報活用能力育成のために、プログラミング教育を実施して子供たちの思考力を育てるという。

小学校でのプログラミング教育と聞いても、なかなかイメージがわかないかもしれない。そのような折、2016年12月に上松恵理子編著で「小学校にプログラミングがやってきた! 超入門編」が出版された。

書籍は、プログラミング教育でどのような力が育成されるかの説明から始まる。最も印象深かったのは、同じ動作をするプログラムは何通りも書けるから、子供たちが「正解は一つではない」「いろいろな見方が大切」と理解するというポイントであった。教師に教えられたとおりに再現すればテストで高い点数が取れる、そんな今までとは異なる新しい教育が実現する可能性が感じられる。

書籍には、フィンランド・スウェーデン・デンマーク・オーストラリア・韓国でのプログラミング教育の実態が説明されている。新しい学習指導要領の実施は2020年度だから、わが国はこれらの国々に5年以上遅れということになる。国際競争力の観点からも問題であり、パブリック・コメントによってプログラミング教育が後退しないように祈りたい。

この書籍には一つだけ残念な点があった。子供たちがすぐに楽しめるお絵かき式のプログラミング言語がいくつか紹介されているのだが、言葉での説明なので理解がむずかしい。この書籍にはデジタル版はないが、デジタル版なら「尺取り虫が伸びたり縮んだりしながら動くプログラム」を動画で確認できたはずだ。プログラミング教育を実施する教室でも事情は同じ。教員が言葉で説明するよりも動画で見本を見せるほうがわかりやすい。プログラミング教育の実施とデジタル教科書の導入は同期しなければならない、と強く感じた。

この書籍は、小学校でのプログラミング教育について基本的な情報を得たいと考える人々にお薦めである。