FRBのイエレン議長は14日、上院銀行委員会における半期に一度の証言で、緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないと指摘し、利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされると指摘した。今後数か月に、どのようにバランスシートを縮小していくかについて協議することも明らかにした。ただし、政策金利を十分引き上げるのが先決で、バランスシートの縮小に取りかかるのはそれ以後だとの発言もあった。
フィッシャー副議長は16日、ブルームバーグテレビのインタビューで、この時期に想定していた状況と現状は一致している、つまりインフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定だと発言し、この二つが実現すれば、ほぼ想定していた通りの軌道に乗ることになるだろうと述べた。
ニューヨーク連銀のダドリー総裁は15日、米経済がトレンドを上回るペースで成長し続け、予想通りに財政政策が景気を刺激すれば、FRBは今後数か月に利上げするとの見通しを示した。
ここにきてFRBの中心人物の3人が相次いで金融政策について発言があった。3人ともに共通しているのは、インフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定通りの状況となりつつあるなか、利上げについては前向きの姿勢であるということである。
市場参加者にとって目先の問題となるのは、3月のFOMCでの利上げの可能性の有無である。2015年、2016年とも年一回ペースの利上げに止まっており、3月の利上げを予想する向きは少ない。ところがイエレン議長やフッシャー議長の利上げに前向きな発言を受けて、一時早期利上げの可能性が意識され、3月利上げ観測が強まった。しかし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁による「今後数か月」との表現などもあり、3月の利上げ観測は後退した。
FOMCでの金融政策の変更は、7名の理事と5名の地区連邦銀行総裁の合計12名による多数決で決められる(現在は理事2名欠員で、理事5名と連銀総裁5名の10名)。しかし、その流れを決めているのは執行部とされるイエレン議長とフィッシャー副議長、そしてこちらも副議長待遇のダドリー総裁とみられる。
その意味では前向きのイエレン議長の発言に対して、ダドリー総裁が少しブレーキを掛けたようにもみられ、少なくとも3月の可能性より6月の可能性のほうが確かに高いのかもしれない。
利上げ時期も注目されるが、それとともにバランスシートの縮小についてはかなり慎重になっていることも個人的には気掛かりである。2006年の日銀は量的緩和を解除してからゼロ金利政策を解除した。これに対してFRBはまずはテーパリングを行ってから、ゼロ金利解除を行い、膨らんだバランスシートの縮小は後回しとした。
これは米国債券市場にも配慮してものではあろうが、償還分を乗り換えない程度の縮小であれば、米国債券市場に大きな影響を与えるとも思われない。大きなバランスシートがあれば物価を押し上げるわけではないことは日銀も証明した格好となっており、なぜ縮小についてこれほど慎重になっているのかが個人的には疑問である。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年2月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。