あと数ヶ月もすれば新人が入社してくる。新人教育でまず必要なことはマナーと考えている人も多いことだろう。では、次のシチュエーションを提示したい。おしゃれと身だしなみの違いについて説明できるだろうか。
西出ひろ子(以下、西出氏)は、マナー講師である。主な著書としては、28万部のベストセラーを記録した『お仕事のマナーとコツ』(学研) があり、2010年「NHK大河ドラマ・龍馬伝」にてマナー指導を担当するなど活動は幅広い。日本でもトップクラスのマナー講師として知られている。
「don’t recommend it」の意味
服装やヘアメイク、みなさんはどのようにコーディネートしているだろうか。色やファッションには好みがある。それぞれに、シーズンの流行を取り入れつつおしゃれを楽しんでいる人も少なくないだろう。
「でも、装いは相手や周りの人から見られているもの。マナーでは自分が好きだから着るだけでなく、相手や周りの人がどう思うかという視点が必要です。おしゃれは自分中心で、身だしなみは相手中心。それが、両者の違いなのです。気遣いでは、相手を思って、気を使う、使わないと考えますが、身だしなみも同様です。」(西出氏)
「相手が見てどう思うかが判断の基準となります。冠婚葬祭の参列にはこういう服装で、という話題は一般的なマナーとしてよく取上げられていますが、普段の装いでも周りの人を意識するのが身だしなみです。」(同)
この考え方はわかりやすい。例えば、飛行機のファーストクラスを例にとれば、社員専用のエンプロイヤーチケット使用の際には、軽装は、“don’t recommend it”と記載されている。ドレスコードが存在すると言っても過言ではないから、一流ホテルのそれと変わらない。普段の装いでも周りの人を意識するのが身だしなみということになるのだろう。
「ただ、自分であれこれ考えているだけでは、周りの人に自分のファッションがどう見えているのかはわかりません。そこでお勧めしたいのが、友だちや先輩、家族など親しい人たちに『最近、私の服装で何か気になることがあったら言って』などと、自分から『言葉の花束』をいただけるよう尋ねてみることです。」(西出氏)
「気づかないうちに恥をかくくらいなら、身内に指摘してもらったほうがよいでしょう。それでも相手が遠慮するようだったら、『指摘してもらったほうが私のためだから』と、諦めずにお願いしましょう。」(同)
これを機会に、勇気を出して、自身の心の扉を開くことも一考だ。親しい人に尋ねてみて、その人の意見に耳を傾けると様々な声が聞こえるかもしれない。
おしゃれよりも、身だしなみを
いくつになってもオープンマインドで、人の話を素直に聞き入れる柔軟さを持てば、人は成長していくものだ。
「すぐに『それって難しいよね』などと変わろうとしない人は、そのままです。変わろう、変わりたいと真剣に思い、努力、行動する人には自分に還ってくるものです。周りの人の意見を大いに参考にして、マナーをアップさせましょう。」(西出氏)
デキル人は、おしゃれよりも、身だしなみを大切にする。自分中心の自分がやりたいファッションからは卒業したいものである。あなたはどうだろうか。
参考書籍
『運のいい人のマナー』(清流出版)
尾藤克之
コラムニスト
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