不祥事が続くNHK、大改革する時期を逃すな

鈴木 和夫

NHK渋谷放送センター

浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ。これは悪事を重ねた石川五右衛門の辞世の句だが、こうした悪事を続けることに懲りない組織がある。NHK、日本放送協会である。NHKは組織として今、日本国内で必要不可欠なのかどうか、国民に意見を問いたい。

最近の事件だけでも、地方支局にレイプ魔を放ち、その地域の女性を恐怖に陥れ、いじめつくし、犯罪を重ね、捕まった強姦魔をいとも簡単に何事もなかったように事件発覚からわずか数日で解雇し、ことの収拾をはかろうとするどうしようもない組織である。その組織について、法律下で管理責任のある経営委員会は、何もなかったように動かず責任を負わないメンバーをそろえ、さらにその上に立つ、総務大臣はまるでこと問題の本質をはぐらかすような答弁を述べているのである。

レイプ犯人が捕まることが明らかになってわずかに数日ほどで懲戒免職処分を下す。トカゲの尻尾切りである。責任逃れもいい加減にしろといいたい。また、この高市早苗総務相コメントもどうなのか。

高市早苗総務相は7日の閣議後記者会見で、NHK山形放送局酒田報道室の記者が6日に強姦致傷などの疑いで山形県警に逮捕されたことを受け、「大変、残念に思う」と述べた上で、「(NHKは)多くの国民の受信料で成り立っている公共放送ですので、公共放送を支える一員として、社員の一人一人が、しっかりと自覚を持って歩んでいただきたい」と苦言を呈した。

組織の継続を前提とした上から目線たっぷりのことの重大さを自覚していないような大臣のコメントである。
また週刊文春の最新号でもNHKの詐欺まがいの事件を取り上げている。横浜では受信料のネコババ職員の事件が報じられたばかりなのにさらに国民を裏切り続ける事態となっている。

テレビ視聴者はどんどん減っている

一方で、身の回りではNHKを見ている人間は少なくなっているようだ。私はテレビとは無縁の生活を送っているのだが、最近、若い人の間でもテレビ放れが進んでいることを実感する。とりわけ10、20代の若者は、テレビはほとんど見ない、あまり見ないという話をよく聞く。日本に外国人留学生は20万人ほどいるが、彼らの住居にはテレビを置いていない人がほとんどだ。

ある大学寮では、フロワの集合場所になる談話室に一台あるが、留学生はほとんど、テレビを見ない。欧米の外国人ともよく話すが、テレビの話題はほとんど出ない。こうしたトレンドは外国人だけでなく、広く日本人の若者にも広がっていると考えられる。さらに、各世代にも広がりつつあると思われる。なぜならNHKは組織として、腐っていることを絶えず露呈しそれを改める討議もほとんどスルーされているようだ。

放送法では経営委員会が組織管理のカギを握る

放送法を読めば読むほど、ゆがんだ法律にしばられた経営委員会の管理責任はあいまいで職員まで及ばないようにできているようだ。逆に言えば、法律に守られているので「何をしてもかまわない」無秩序を放任する空気があるのではいか。

第二九条 経営委員会は、次に掲げる職務を行う。
イ 協会の経営に関する基本方針
ロ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして総務省令で定める事項
ハ 協会の業務の適正を確保するために必要なものとして次に掲げる体制の整備

この中の「ハ 協会の業務の適正を確保するために必要なものとして次に掲げる体制の整備」だろう。経営委員会はこの職務をしっかりとはたしているとはまったく言えないのではないか。

(1)会長、副会長及び理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
(2)会長、副会長及び理事の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
(3)損失の危険の管理に関する体制
(4)会長、副会長及び理事の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
(5)職員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
(6)協会及びその子会社から成る集団における業務の適正を確保するための体制
(7)経営委員会の事務局に関する体制

この中の「(5)職員の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制 (6)協会及びその子会社から成る集団における業務の適正を確保するための体制」これになるのだろうか。これも、連発する不祥事からすると、果たしていないだろう。

大組織を廃止、非営利メディアとして再出発を

NHKを政府の広報を担う団体に作り替え、税金を給付する経営委員の組織団体に変える。その経営委員団体の下に現場取材編集にあたる非営利メディアの職員に生まれ変わるようにするのである。アメリカでは、非営利メディアが、政府や州などの広報を担い米国民に伝えている。

NHKは現在、年間7000億円ほどの収入で運営されているが、あまりに巨大な組織となり、組織腐敗がはびこり、犯罪を犯罪とも認識できない職員を作り上げている。NPO組織に生まれ変わることで何分の一かに大幅に削減できるのではないか。こうした不祥事集団の流すコンテンツを喜んで視聴する者はほとんどいないのではないか。レイプ犯が、そのために使った交通手段の自動車のガソリン代などを国民が払っているお金で賄われていたと思うと、こうした腐敗組織を支え続けることの次第に我慢がならないのである。

鈴木 和夫
慶大経済卒。MBA修了。日経HR編集委員を経て、現在ジャーナリスト。外国人留学生就職支援、大学等でも教えている。
※編集部より:執筆陣の一人である鈴木和夫さんの4年5か月ぶりのアゴラへの投稿となりました。