「情報の非対称性」という言葉は、交渉など場合に一方が他方より圧倒的に多くの情報を持っていて有利な立場にいるような場合に用いられます。
例えば、就職面接では応募者の資質についての情報は会社側よりも応募者の方が圧倒的に多く持っていることから、会社側はその不利益を解消するために「インターンシップ制度」を導入したりします。インターン期間中に応募者に関する情報をできるだけ多く集めて、「非対称性」を是正するのが大きな目的です。
ある分野に精通している人や会社を相手にする場合にも、「情報の非対称性」が大いに問題となります。
車をお持ちの方は、車検という金銭的負担が悩みのタネですよね。
この車検、車を買ったディーラーを鵜呑みにすると、必要のない金銭負担を強いられることがあるのです。
ずいぶん昔のことですが、私が車を最初の車検に出したところ、担当者から「タイヤの交換をしないと車検を通す自信がない」と伝えられたので、言う通りにタイヤ交換をしました。
数年後、自動車学校の教官をやっていた友人にその話をしたら「大して走っていないのに最初の車検でタイヤ交換なんて普通あり得ない。まんまと騙されたんだ」と指摘されました。車に関する知識が少なかったことが原因で、知らないうちに不利益を被っていたのです。
法律知識「非対称的」の典型なので、私は一般人や企業関係者には複数の弁護士の話を聞くように勧めています。残念なことに、間違った回答をする弁護士の数は驚くほど(本当に驚くほど)多いというのが私の実感です。
7年前に友人に500万円貸したという借用証を持ってきて、「A弁護士に相談したら500万円に民事法定利息の5%を加算して675万円請求できると聞いた。ついては内容証明の書き方を教えて欲しい」という相談者がいました。「借用証には書いてありませんが、相手と利息の約束はしたのですか?」と尋ねると「していない」とのこと。
「私人間のお金の貸し借りは利息の約束をしないと利息は付きません。期日以降の遅延損害金は付きますが」と正しい説明したのですが、A弁護士が書いた「675万円」というメモを出して「そんなはずはない!」と怒り出す始末でした。
税理士さんの中には、不必要な税金を顧客に収めさせようとする「悪徳税理士」がいます。中小企業の経営者たちが時々「B先生は顧問先企業ではなく税務署の味方ではないかと思う時がある」と愚痴をこぼしている税理士さんがいました。
B税理士さんは、税務調査で指摘されることがほとんどないのを誇っていたようですが、経営者から見ると明らかに納めすぎだというのです。誰が見ても「経費」になるものをことごとく計上していないのです。B先生に相続税の申告を任せると、無価値の動産を探し出してきては金銭評価して相続金額を過大にしてしまうことでも有名でした。
どうやら、無知な顧客を犠牲にして税務署にいい顔をしているようなのです。
これも「税務知識の非対称性」が招いた災いの一つと言えます。
足に小さなイボができたので整形外科のC先生に切ってもらおうとしたら、手術着(?)と帽子を着せられて点滴を打たれて、挙げ句の果てには「一晩入院していってはどうか?」と勧められた人もいました。
ここまでくると、「非対称性」どころかブラックジョークになってしまいます。
情報の非対称性による不利益を防ぐ有効な方法は、相手の言うことを丸呑みするのではなく自分自身でネット検索してみることでしょう。
業者から見積もりをもらったり、専門家からアドバイスを受けた時、ほんの数分ネット検索するだけで随分結果が異なってくることが多いのです。
ネット情報も不正確なものが多いのですが、いくつも検索すればおぼろげながら真実が見えてきます。
時間と費用がほとんどかからずに得られるセカンドオピニオンなので、有効活用しない手はありません。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。