フランスの大統領選挙は、極右のルペン30%、保守派のフィヨンと中道左派のマクロンが20%ずつ、左派のアモンと極左に近いメランションが15%といった展開。そのなかでメランションがアモンに譲るという噂から国債利回りが上昇していた。
そうなると、フィヨン、マクロン、アモンが混戦で、アモンが抜け出すと、ルペンとアモンという真ん中抜きの極右・極左決選投票もありうるといわれはじめていた。
私は水曜日までフランスの地方を旅行して庶民たちも含めた生の声を聞いてきたのだが、「さすがにルペンとアモンではどうしよう。もう民主主義が正しいと自信がなくなった」というフランス人らしくない人も多かった。
そんななかで、パリで木寺昌人・駐仏大使とも21日の午前に情勢を話し合ったのだが、私はこんなことをいっておいた。
「今度の選挙は1974年に似ている。ポンピドーが現職のまま死んで、そのあとの臨時大統領になったポエールを左派が担ぎ、与党のドゴール派ではシャバンデルマス元首相が出馬したが、中道派のジスカールデスタンが左右の融合を唱えて第三の候補になった。 そして左右からジスカールに合流するものが出て、とくに、シラク内相も首相就任を条件にこれに乗った。今回も、マクロンに首相やその他の重要ポストを条件に組むのがいるはず。それが決め手となって、マクロンが抜け出す可能性がかなりある」
そうしたところ、22日に中道右派のフランソワ・バイル元教育相が大統領選への不出馬を表明し、中道・無党派候補のエマニュエル・マクロン前経済相に協力する考えを示して、ちょっと、私の見通しも当たった感じだ。
バイルは「われわれは極めてリスクの高い状況に置かれており、異例の対応を要する」と指摘。自身が「犠牲」となり、「マクロン氏に協力を申し出ることを決めた」と語ったとのこと。
これを受けて、ユーロが対ドで上昇したほか、フランス国債も大幅に値上がりした。
バイルはフランス南西部ポーの市長を務め2007年の大統領選挙に出馬し第1回投票で18.6%の支持を得た。12年には9.1%、最近の支持率調査では5%前後だったが、出馬したらマクロンにいちばん不利とされていた。
しかし、出馬辞退で、中道左派と中道中央の連帯がなり、こうなると、社会党右派や共和党の一部の支持も期待できることになった。
フィヨンがあいかわらずペネロープ事件(妻と子を公設秘書として架空雇用した疑い)の解決に悩む中で一気に情勢が変わるかも知れない。
マクロンの政策はひとことでいえばビジネスに都合のよい環境作りと、合理化によって給付は減っても痛みは少ない社会政策、そしてEU統合維持というもの。
具体性が問題だが、方向的にはリベラル・ソーシャリズムの王道をやや右に寄せたラインで期待は持てる。
しかし、候補乱立で、ちょっとしたスキャンダルで動きそうなだけに楽観はできないが、だいぶ希望は持てそうな感じだ。マクロンは、オランド氏の閣僚だったが、右派と左派との融合を訴えて社会党を離れた。ENA出身の官僚で、日本でいえば、民主党内の玉木氏とか福島伸享氏とかが離党したような立場にある。