「フランク三浦」に裁判で負けて得をした「フランク・ミュラー」

内藤 忍

大阪の時計製造販売会社が作っている腕時計「フランク三浦」に対して、スイスの高級時計ブランド「フランク・ミュラー」が起こしていた商標無効の訴えが、最高裁で上告棄却され、天才時計師三浦さんの知的財産高裁判決が確定しました(写真は公式サイトから)。

確かに、数千円の時計と100万円以上する高級腕時計を混同する人は、あまりいないはずです。「全体の語感が似て紛らわしいが、外見などが異なり、明確に区別できる」としていますが、本家に似せたパロディブランドであることは確かです。偽ブランドのどこまでが違法でどこまでが認められるのか、混乱してわからなくなってきました。

この理屈でいくと、六本木にある居酒屋「美豚(ヴィトン)」が、「ルイ・美豚」で商標登録すれば、認められるのでしょうか?

それはともかく、フランク・ミュラーは、今回の裁判結果に不満かと思います。ある種、新手の炎上商法とも言える今回の裁判騒動ですが、訴えられたほうも訴えたほうも得をすると言う不思議な結果に終わったというのが、私の見立てです。

その中でも、1番大きなメリットを取ったのは、実はフランク・ミュラーではないでしょうか。

高級時計としてマニアには高い人気を誇るフランク・ミュラーですが、一般的な知名度はロレックスやオメガといったメジャーブランドに劣ります。今回の裁判で初めてフランク・ミュラーの名前を聞いた人も多いと思います。裁判が面白おかしくメディアで報道されることによって、スイスの本家のブランドの知名度がどんどん上がり、高級時計としての認知度が格段に向上しました。

一連の報道を広告宣伝価値に換算すれば、今回の裁判は実は極めて低コストなマーケティングと考えることもできるのです。フランク三浦側も、もちろんメリットをとっていますが、商品の単価が違います。また、裁判の話題が今後沈静化すれば、フランク三浦の方は一時の流行りものとして忘れられてしまうかもしれません。しかし、ブランド価値を高めることに成功したフランク・ミュラーには、今回のメリットはずっと続くことになると思われます。

裁判に負けてしまったフランク・ミュラーですが、せっかくですからこの機会にさらに便乗して、フランク三浦とコラボ商品を出してみてはどうでしょうか。裁判に負けても、相手とコラボしてしまう高級ブランドとしての余裕と懐の深さをアピールできれば、更なる話題性からブランド価値を更に上げられるはずです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。