南スーダン日報データ、陸自も保存 不開示決定後も(朝日新聞)
同省関係者によると、日報のデータは、陸自の調査研究部門の研究本部が管理する内部サイトに保存されていた。日報は派遣部隊が現地の日々の状況や課題を報告する資料。専用のネットワークで日本に送られ、関係部署が閲覧できる。
2月14日の衆院予算委員会では共産党議員が「日報が研究本部のデータベース内にあったのではないか」と質問。防衛省はその後、報道陣に「日報は当該データベースには保管されていない」と説明していた。不開示決定の後、日報が研究本部のデータベースから削除された可能性がある。
PKO日報、一貫して陸自で保管…隠蔽か(読売新聞)
率直に申し上げて、防衛省、自衛隊の情報開示体制は先進国、民主国家というよりも中国とや北朝鮮とか、ジンバブエあたりにむしろ近いです。
普通の民主国家なら当然公開する情報もひた隠しにしています。
それを政治も、記者クラブを中心とするメディアも是としてきたわけです。
でもその秘密主義が防衛省や自衛隊の劣化を招いているわけです。
納税者に対する説明責任果たさないでいいから、仲間内の顔色みて書類を作るし、外部の目を気にしないからいい加減な書類を作成する。それが政策に反映されてしまいます。
もう何回もご案内しておりますが、陸幕装備部がぼくの著書について「正誤表」を作りました。
そこでは54カ所の間違いがあると指摘しいたのですが、指摘が誤りで抗議すると3カ所に激減。
しかもそのうち2カ所は単に国交省との見解の相違でした。
恐らく根拠にしたのはウィキペディアや下手すると2ちゃんねるや素人のブログ。
今時、大学はおろか高校生でもやらないレベルの低いレポートでした。
しかも自衛隊用語を使っていないと間違いとか。例えばAH-64Dを攻撃ヘリと書いていると、誤りで戦闘ヘリであるとか。軍事的にはどうでもいいことです。別にぼくの本は防衛省内のパンフレットではございません。それならば、アメリ海軍の駆逐艦やフリゲイトも「護衛艦」と書かないと間違いということになります。
この程度の粗雑な知識をもった、人間が情報での出所と正確差さが極めて怪しい、ネット情報をもとに内部情報を作っているわけです。
で、ぼくが航空ショーで米空軍、メーカーの担当者に確認した話を、ウィキペディアか素人のブログを元にして間違い、と断定したりしていました。
統幕にしても井上孝司氏のサイトを使わせてくれと接触してきたそうです。自分たちは英語の専門サイトの翻訳もできない、ということでしょう。しかも金を払うわけでもない。
こういう仕事でお金をもらえるというのは、なんとうらやましい職場でしょう。
知的障害があるとしか思えません。
なぜこんなずさんな仕事をするのかというと、外部の目に触れないだろうという慢心とどうせ内輪の書類だからと手を抜いていたのでしょう。
で、この件を大臣に記者会見にで質しました。
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2013/10/11.html
後日の回答が「内部文書なので開示できない」とのことでした。
機密でもなんでもない、公開情報を元に作った書類がなんで公開できないのか。
しかもそれがほとんど間違っている文書なわけです。
このレベルのものを公開できないのが、自衛隊、防衛省の実態です。
こんな状態で戦争なんかできるわけないでしょう。
この文書が組織防衛のため公にならなかったために、それが問題とならず、担当者も処分されませんでした。
防衛省や自衛隊ではいまだにウィキペディアや2ちゃんねるを使って資料を作っている可能性が大です。
つまり防衛省の政策やら永田町へのご説明の資料はまるで信用できない、ということです。
外部からの批判の目にさらされないと、組織というものは劣化していくわけです。
ぼくは特定機密保護法に関して、この質問を行ったわけです。この程度の情報すら開示できない組織が、特定機密保護法ができたらますます情報をださなくなるでは、と危惧したからです。
が、皆様のNHKの記者がこのぼくの質問に噛みついたわけです。
[清谷信一]『記者クラブ』というシステム〜防衛省大臣記者会見後で非記者クラブ会員に圧力をかけるNHK記者の存在①
[清谷信一]『記者クラブ』というシステム〜防衛省大臣記者会見後で非記者クラブ会員に圧力をかけるNHK記者の存在②
NHKは知る権利よりも防衛省様、大臣閣下といい関係を維持して、記者クラブの特権的な甘い汁を吸いたいということなのでしょう。
繰り返しますが、この件で、書類が公になれば防衛省や自衛隊のずさんな書類作成の実態が明らかになってでしょう。防衛省や自衛隊はそのずさんな書類を元に政策を決定し、議員へのご説明を行っているわけです。それでまともな政策が実現できるでしょうか。
まあ皆様のNHKとしては、そんな厳しい質問から防衛省や防衛大臣を守ることがお仕事なのでしょう。
だから情報開示がいつまでたっても進まないわけです。
因みにPKO参加隊員のカルテは5年で廃棄されておるようです。
普通の国は将兵のカルテなんて第一次世界大戦のころのものでも保管しています。それは衛生の研究のために不可欠だからです。ところが「我が軍」は5年で廃棄。個人情報の保護だという名目らしいですが、イラクでどの程度の健康上の問題があったか、いまとなっては自衛隊も知ることができないことになります。
つまり衛生なんてまともに研究していないわけです。
だからぼくのインタビューでも衛生部の偉い人がボディアーマー、ヘルメットを着ているので四肢しか怪我しません」みたいな眠たい話をするんです。だったらあんたら、いっぺんボディアーマー付けでドラグノフで腹部を撃たれてみろ、と。
その程度のお粗末な、諸外国から極めて劣ったレベルの衛生体制で、隊員を危険なPKOに送り出しているわけです。これは人権侵害の問題でもあります。なんで人権団体がこれを取り上げないのか極めて不思議であります。
防衛省、自衛隊の情報開示の防波堤となっているの記者クラブではないでしょうか。
その団体が情報開示を求めるフリをするのは茶番でしかありません。
情報公開を一番いやがるのは自分たちの権益が侵される記者クラブではないでしょうか。書かないで恩を売るという商売ができなくなりますからね。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年3月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。