アゴラでも少々盛り上がっていた「大学進学」に関する議論。私は、「なぜ大学にいくべきなのか」と問われたら、「社会の仕組みを学ぶため」と答える。大学は高等教育の場であるから違うと答える人がいるかも知れないが、決してそうとは言えない。
「なぜ勉強しなければならないのか」「なぜ大学にいくのか」という問いには、実は「答え」がない。「いい大学に進学して、いい会社に就職する」というのは、勉強は手段であって、「なぜ、大学に行くのか」という問いに対する本質的な答えではない。
しかし、見落としてはならないのは、誰もが、「勉強しなければいけない」ということはわかっていることにある。したがって「なぜ大学にいくのか」という問いは、答えを求めているのではない。まともに答えようとすると「的ハズレ」ということにもなる。
なぜ、多くの人は大学を目指すのだろうか。大学を出ていないと就職にも困るし、待遇が得られないと考えている人が少なからず存在する。皆が行くから自分だけ行かないわけにはいかない。落ちこぼれ回避の動機である。
文科省のデータによれば、1955年度に7.9%だった大学進学率は、2016年度で「大学・短大進学率(過年度卒含む)」は56.8%に達しており、これは過去最高の水準である。
2人に1人が大学に行く時代となった。しかし、時代は変わり社会構造も変化した。大学生はもはやエリートではない。サークルやバイトに明け暮れている学生も多く質も劣っているといわれる。提供する専門教育も最先端ではなくなってきている。
56.8%という数値から何が見えるのか。まず、多くの人が大学に行くということは、従来では就職しなかった仕事にも就いている可能性が高いことになる。大学に入りさえすれば勝ち組な人生を歩めるという幻想は終焉を迎えているのである。そのような概観を理解したうえで、大学へ行くことの意味を考えるべきである。
「大学、つまんないよな!仕事、つまんないよな!」。誰もがハイパフォーマではないし、仕事ができるわけでもない。いい大学を出た落ちこぼれも大勢もいる。大学という場を通じて社会の仕組みを学び、多様な経験を積むことは可能だ。社会の仕組みは社会人でなければ経験が積めないものではない。そう考えれば、大学の価値が見えてくる。
【参考書籍】
5年前に上梓した拙著です。採用市場の矛盾点についてまとめました。
『就活と採用のパラドックス』
尾藤克之
コラムニスト
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