市場価値が2兆ドルにもなるとされている世界最大の石油生産会社サウジアラムコのIPO(新規公開株売出)準備作業が進んでいる。
ロイターが最初に速報した「3社を重要なアドバイザー役に正式指名」というニュースを、FTが関係者に取材し、若干の解説を加え、追いかけるように報じていた(”Banks secure key advisor role on Saudi Aramco IPO” around 4:30 on Tokyo time)。なお、サブタイトルは ”JPMorgan、Morgan Stanley & HSBC to work on what is expected to be record listing” となっている。
言うまでもなく、JPMorganとMorgan Stanleyはニューヨークに、HSBCはロンドンに本拠を置く巨大金融会社だ。
世界最大の金融市場シティを抱える英国はいまブレグジットで揺れている。第2位のウォールストリートがある米国は「9・11の犠牲者家族がサウジ政府を提訴できる法律」が成立しており、現実に提訴の動きが出始めている。ちなみに東京は、シンガポール、香港に次ぐ第5位だ。
だが、サウジアラムコのIPO主引受会社(leading underwriters)となると見込まれる上記3社の本拠所在地を考えると、海外における上場はロンドンとニューヨークの株式市場になるのだろうか。
筆者が目にした限り、先般、来日されたおりサルマン国王は「日本(人)にはサウジアラムコの株を購入して欲しい」と発言されていたが、それ以上でもそれ以下でもなかった。
日本にいても、ロンドンあるいはニューヨークに上場している会社の株を買うことができる時代だ。
総合的に考えると、サウジアラムコの東証上場はないのだろうか。金融の専門家はどう読んでいるかな。知りたいなぁ。
さて、FT記事の要点を次のとおり紹介しておこう。
・世界最大の市場価値を持つ上場企業を目指すサウジアラムコのIPO準備作業を行う複数の銀行が指名された。
・関係者4人によると、サウジアラムコはJPMorgan、Morgan StanleyおよびHSBCを上場作業の財務アドバイザーとして起用した。この4人のうちの2人によると、これら3社は、いずれIPOの主引受会社になると見られている。問い合せたが、サウジアラムコからは回答がなかった。
・今回の契約は年末までの期限で、それ以降は履行状況(performance)に基づき、委託任務(mandate)内容が更改されると関係者のある人はいう。さらに「今回のIPOは他の如何なるものとも似ていない。もちろんこれら3社は世界全体の中核的調整役となり、主引受会社となるが、事態は依然として流動的だ」と述べた。
・FTは先月、これら3社がIPOにおいて重要な役割を果たすだろうと報じたが、木曜日(3月30日)にロイターが最初にこの正式指名を報じた。
・関係者3人は、サウジアラムコは来年終盤(late next year)のIPOを準備しており、独立財務アドバイザーとしてMoelis & Co.とEvercoreを起用したが、「両社はIPOへの道筋を示し、関連作業のスコープを策定してきた」と語った。
・3社が行う作業には、どこに上場するか、ということも含まれている。
・前Citi GroupのスターバンカーMichael Kleinは、IPOを含め広範な事項についてサウジの管理当局(authorities)のために仕事をしている。
・このIPOは、脱石油を目指すサウジの総合的経済改革の中心をなすもので、得られた資金を技術分野など非石油部門に投入することになっている。
・今週の月曜日には、サウジアラムコを含む大手石油会社の税率を85%から50%に引き下げることが発表された。結果として同社の配当原資が多くなり、(IPO時の)市場価値を高めることになると見られている。
・また、何十年にもわたる顧問弁護士White & Caseは、IPOにおいても起用されている、と関係者は語った。
・(FTからの問い合わせに対し)JPMorgan、Morgan StanleyおよびWhite & Caseはコメントを辞退した(declined)。HSBCおよびEvercoreからはすぐには回答がなかった。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年3月31日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。